子供は親を選んでやってくるということを本で読んだ奥さんは、3歳になるとその記憶がなくなってしまうので、ぜひ聞いてみたいと思っていました。
なぜ胎位異常だったのか、どうしてうちに来たのかなど聞きたいことはたくさんありました。
今日のお話は、子供にどうしてここにやってきたかについて聞いたことをお伝えします。やはり、子供は親を選んでやってきていると思うとなんだかとても感慨が深いです。
2歳7ヶ月の子供の記憶
「こどもが3歳になるまでは、お腹の中の記憶があるから聞いてみたらおもしろいらしいよ」
奥さんが、そんなことを言ってきたのが、娘がたしか2歳7ヶ月くらいのころでした。
「3歳を過ぎると忘れちゃうんだって」
この当時、「オーラの泉」が、まだ放送されていたころで、奥さんはスピリチュアルやパワースポットにはまっていて、この事も美輪明宏さんだか誰かの本に書いてあったらしいのです。
この少し前にも、奥さんは友人を通じて前世が見えるという人に会って、自分の前世を見てもらいました。
しかも、その前世が見える人はアメリカ人でまったく日本語は話せず、奥さんとの会話も英語のみで、無駄な情報も与える語学力も奥さんにはなかったので、奥さんがどういう人か、彼女は全く知らないはずです。
「わたしの前世は、出エジプト記でエジプトを脱出したユダヤ人で、あなたはエジプト人のミイラ職人だって。エジプト人とユダヤ人で許されぬ恋の末、離れ離れになったので今生で結ばれたらしいよ」
たしかに、奥さんは若いころ出エジプト記が大好きでエジプトに1度、イスラエルには3度も渡航していたし、わたしは子供のころからツタンカーメンやミイラが大好きでミイラの本を親に買ってもらうほどだったので、
「へへ〜、たしかにその人すごいね〜。すごいけど、前世、昔すぎるよね〜」
なんて、話半分に聞いていると、
「その証拠に、自宅にはエジプトにちなんだもので二人がものすごく大切にしているものがあるはずです。なんて、言うのよ。エジプトのものなんてうちにないよね〜。だから、ちょっとね〜。眉唾もんだなってね〜」
「ないね〜。エジプトのものなんて」
ニャ〜
「マウちゃ〜ん。あっ!いた〜!エジプト!」
うちの猫のマウは、エジプシャンマウというエジプト原産の猫だったのでした。
そんなこともあったので、奥さん今度は、こどもの前世というか、生まれる前の記憶を聞き出そうと言い出したのでした。
「ただしね、聞くタイミングってのがすごい大事で。一度、聞いて答えてくれなかったら、何度聞いてもダメらしいよ。答えてくれたとしても一度口に出したら子供はその記憶をなくしてしまうから、後にも先にも一度しかチャンスないんだって」
「そういうのが、インチキくさいよね」
いかにも、無関心を装い、そうつぶやくわたしですが、実は心では、
「マジ?マジで?ちょ〜聞きたいんですけど〜」
と、かなり興奮していたのでありました。
で、ついにその日、その瞬間であります。
お人形遊びに夢中になっている娘に、それとな〜く、さりげな〜く、ついでに〜、という気軽〜な雰囲気を出しつつ声をかけます。
「ねえねえ。音ちゃんはさ〜。パパとママのところに来る前さ〜、なにしてたの?」
「え〜?なに〜?」
「パパとママのところに来る前のこと覚えてる?」
「覚えてるよ〜。お空にいたの〜」
「お空ってあのお空?」
「そう。雲の上で、おじいちゃんとミカちゃんといっしょにパパとママ見てたの〜」
「えっ?おじいちゃんってだれ?」
「おじいちゃんだよ。しろいなが〜いおひげをはやしたおじいちゃん」
「へ〜?????」
「そうだよ。ミカちゃんとおじいちゃんと音ちゃんでお空のうえからパパとママ見てたの〜」
「ふ〜ん」
娘は、こちらを見ないでお人形遊びをしながら、当たり前のようにしゃべります。横で奥さんが、(もっと聞きなよ)とツンツンわたしを突きます。
「パパとママ、なにしてたの?」
「(両手を目一杯広げて)こ〜んな大きなお池でお魚とってた〜。(さらに両手を目一杯広げて)こ〜んな大きなお魚とってたの〜。すごいおもしろそうだった〜。そしたら、ミカちゃんが、パパとママのところに行きた〜いって言ったから、音ちゃんがさきに行く〜って言ったの。そしたら、おじいちゃんが、いいよ〜って。それで、音ちゃんが先にパパとママのところにきたの」
「お魚?パパとママが?お魚とってたの?」
「そうだよ!」
「池で?」
「そうだよ!わすれたの?」
「どうやって?」
「こうやって(両手を大きく広げて)」
「手づかみで?」
「そう。手でとってたの。ものすごくたのしそうだった。だから、音ちゃんもいっしょに遊びたいって思ったの〜」
横で、奥さんが、驚愕の表情を浮かべてわたしの袖を引っ張ります。
「なに?」
「ほら、あのとき。区のお祭りのとき。あの日じゃん」
「あっ!あああああ〜!」
思い出しました。そう、あの日。それは、区の主催した秋祭りの日でした。駅前広場でイベントが行われていて、参加費500円を払うと、大きな生け簀にあふれんばかりに泳いでいる鮭と鱒の手づかみイベントに参加できるというものでした。制限時間は一人10分間。わたしは500円払い、全身ビショビショになって鮭を1匹。鱒を3匹ゲット!奥さんは参加こそしませんでしたが、「いけー!掴めー!取れー!」と、大騒ぎ。
そして、その夜、獲得した鱒を肴に酒をガップガップ飲んで、娘が受胎したのが、おそらくその晩ことだったのです。
で、驚きはこれだけはありません。
「ミカちゃんも一緒だったんだよ〜」
「ミカちゃんって保育園で同じクラスのミカちゃん?」
「そうだよ〜。ミカちゃんがパパとママのところに行くって言ったから、ダメ〜!音ちゃんが行く〜って言ったの〜。そしたら、おじいちゃんがいいよ〜って」
「へ〜」
奥さんが、眉をしかめてこう言いました。
「ちょっと怖くない?ここまでリアルな話するなんて思ってないもん…」
実は、ミカちゃんの誕生日は娘の7日後。しかも、同じ病院で、娘と奥さんが病院を退院したその日。まさに、病院の玄関で、看護師さんに見送られているその瞬間に、すれ違うように入ってきたのが、ミカちゃんのお母さんだったのです。で、保育園の入園式の当日。奥さんの隣に座っていたのがミカちゃんのママで、席につくなり、ミカちゃんのママが、奥さんに、
「あの〜、◯◯病院で赤ちゃんを産みませんでしたか?」
って、話しかけてきたのでした。わたしも奥さんもミカちゃんのママのことはまったく覚えていませんでしたが、ミカちゃんのママが、
「わたしが担ぎ込まれたとき、赤ちゃんを抱いて退院している人がいて、うらやましいな〜って思ってすれ違ったんですよ。だから、わたし、お母さんの顔、ものすごく覚えていたんです」
ちなみに、病院は、自宅からはかなり遠い。ミカちゃんのママも難産で近所では産めなくて、その病院へ連れてこられたのでした。ミカちゃんちとうちの家は近所ではありません。でも、誕生日は一週間違いで保育園は一緒。そして、娘の生まれる前の記憶がこれ。
なんですか?この話。
だから、娘はミカちゃんのことをある程度、物心がつくまで、本当のお姉ちゃんと思っていたというオチまでつきます。
ある日の夜、わたしたち家族3人でご飯を食べに出かけたら、駅前でミカちゃん家族が立っていて、
「うわぁ!本当に来た!」
と、ミカちゃんのパパが驚きの表情を浮かべてこちらを見ています。
「こんにちは。どうしたんですか?」
と、尋ねると、
「ミカが、ここにいると、音ちゃんがもうすぐやってくるから待ってるって言うんです。夜だからこないよって言っても絶対に来るからって。そしたら本当に来たからビックリした」
なんてこともありました。
「なんかリアルすぎて全然笑えないじゃん」
翌朝、わたしは、娘を連れて近所の魚屋さんへ。スーパーだと切り身しかないので、一尾丸ごと売っている魚屋で確認がしたかったのです。
「音ちゃん。パパとママが取ってた魚ここにある?」
「これ!」
すぐに指を指したのが、鮭でした。
「これじゃないの?」
試しに鯛を指しても、
「ちがう。これ」
と、やはり鮭を指します。
これが、このときのお話。
つまり、なにを申し上げたいかと言うと、
こどもが親を選んで来ている
と、いうのは、真実であったということです。
少なくとも、わたしはそう思っています。
そんなお話でした。
(河内貯水池にて。2歳になったばかりのじいじとばあばと孫)
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)