不妊で悩んでいるときは、周りの人が応援してくれたのに、いざ妊娠してみると、仕事に支障が出るので迷惑だというようなことを言われた奥さんは、精神的にかなり参りました。一緒に妊活を頑張っていた友人とも気まずい雰囲気になり、相談する相手は助産師さんしかいなかったのですが、助産師さんと相性が合いませんでした。
助産師さんから、「母親のせいだ」というキラーフレーズを言われるたびにどんどん奥さんの心は沈んでいき、最悪の結果を招くことになってしまったのです。
今日の記事は、私たちに実際に起こった高齢出産妊婦さんの苦悩を見ていきます。
助産師からのプレッシャー「母親のせいだ」
妊娠7ヶ月が経っても、相変わらず、お腹が張った状態は改善しませんでした。
極度の貧血。血圧は上が100を超えません。
「お母さんの栄養が悪いとお腹の赤ちゃんは、寒いよ〜寒いよ〜っていう状態なの。頑張って貧血治さないと赤ちゃんつらいのよ」
助産師さんは、きつい口調で毎回、奥さんにプレッシャーをかけます。わたしは、何度も、助産院を変えたほうがいいと奥さんに助言しましたが、奥さんは、
「今さら変えられない」
と、言います。普通の産婦人科でいいじゃないかと言っても、「それだけはいやだ」と聞き入れません。助産師さんに言われたとおり、努力もしていました。貧血を改善するために毎日、烏骨鶏を1個必ず食べ、下半身を冷やさないようにタイツや靴下を重ねばきし、1時間のウォーキングをしていました。わたしが夜、家に居られる日は、ふくらはぎから下をマッサージし、体を温めます。助産師さんから指導された三陰交のつぼも押しまくりました。
それでも、やはりダメなのです。張りはおさまらず、血圧も上がらないし、貧血も治りません。
そして、ついにその日はやってきました。
最悪の状態の妊婦に助産師さんからの最悪の言葉「お母さんの愛情が足りないから」
「今日はいつもよりお腹が張っているみたい。なんかよくない気がする」
最初から奥さんはそう言っていました。助産院で、いつものように、最初にお腹のエコーを観てもらいます。助手の助産師さんがマウスのようなものを奥さんの突き出たお腹に当てました。
突然、助手の方の手がピタッと止まり、同じところを行ったり来たりしています。
「あれ?あれ?なになに……えっ?…」
助手の方は小さな声でブツブツ言いながら、表情が見る見る固まっていきました。
「どうしたんですか?」
「いや〜。赤ちゃんがよく見えないんですよ〜。写ってないといけないものが映らないんですよね〜」
「どういうことですか?」
「いや〜。どういうことなのかよくわからなくて…」
気まずい沈黙が流れます。
「あのー、よくわからないので、先生を呼んできます」
それから、すぐに例の助産師さんが来ました。マウスを動かして画像を確認しています。かなり、深刻な表情です。わたしにも奥さんにもかなりヤバイ状況にあることは想像つきました。
助産師さんは、厳しい表情をしてエコー画像を見たまま、こう言いました。
「あのね。赤ちゃんが、本来いなければいけないところにいないのね。それで、写ったらいけないものが写ってるの(おそらく顔だったのでしょう)。ここにあるエコーでは、きれいに映らないからなんとも言えないけど、たぶん、ここでは対処できない状態になっていると思う。紹介状を書いてあげるから、すぐに産婦人科できちんと調べてもらってちょうだい」
「つまり、どういうことですか?」
「自然分娩は難しい状態に赤ちゃんがなっているってことしか今は言えないけど、すぐに大きな病院で検査したほうがいいということ」
「危ないんですか?」
「それはわからない。でも、あなたが(奥さん)が、赤ちゃんにしっかり愛情を注いでこなかったから、こうなったかもしれないんだよ。今からでも遅くないからもっと赤ちゃんに話しかけてあげなさい。いいわね。あなたは、まだ全然母親になれてないから、しっかりしなさい。わかったわね」
この後に及んで、妊娠7ヶ月の妊婦に言う言葉でしょうか。
”赤ちゃんに愛情を注いでこなかったから”
なぜ、この人はそう言い切れてしまうのか?この人は、奥さんに、「お腹の赤ちゃんが異常事態だ」と言ったうえに、それは、
「母親のせいだ」
と、言ったのです。助産師さんは、叱咤激励のつもりで言ったのでしょう。きっとそうでしょう。そう思わないと理解できませんから。でも、その言葉は、明らかな間違いです。
言っていいことと悪いことがある
前回登場した医者といい、職場の上司といい、
なぜ、
人は人のうえに立とうとするのでしょう?
なぜ、
立場が上だというだけで、恥ずかしげもなく、権力を振りかざして人を見下すことができるのでしょう?
なぜ、
そういう人は、自分がいったい何をしているのか、何を言っているのか、客観視できないのでしょう?
いくら質問をぶつけても、わたしにはわかりませんでした。
わかっていることは、一つだけ。
できないやつはできない。そんなやつを変えることはできない。自分が変わるしかない。
奥さんは、やっと、気付きました。
「もうだめ。ここでは産めない」
と。
助産院から産婦人科で診断を受けるが、結果も最悪
初めて行った産婦人科の先生は、奥さんより5歳年下の女医さんでした。彼女自身も、不妊治療継続者でした。
そこで、撮ったエコー写真が、これだったのです。
「奇形じゃないと説明がつかない」
と、言われたこの写真。でも、正直、
「赤ちゃんの顔が見れたね。目鼻立ちが整ってるよね」
人間は、どんな状況にいても、変なことを思いつくんですね。いま考えるとおかしいですが。
奥さんは、先生に紹介状を書いてもらい、さらに大きな病院で精密検査を受けることになりました。お腹の赤ちゃんのMRI、CTスキャンを撮りました。
そして、検査結果は、
「胎児に異常はいっさいありません」
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意味がわかりません。
「どういうことですか?」
「医学的に異常が見られないのです。首が反り返ったままですが、骨格、骨そのものに異常はありません。脳に異常もありません。全ての結果が、他の胎児とまったく同じ、正常な数値が出ています。それなのに、なぜ、あのような形なのか、まったくわからない。そういうことです」
「なぜ、首が曲がっているのか、原因がわからないということですか?」
「はい。だから、医学的には、首も通常の状態に戻るはずなんです。骨盤に引っかかっているということもありませんでした。正直、生まれてみないとわからないということです」
悲しむべきではないけれど、喜んでいいのやら、なにをどう考えればいいのだか、さっぱりわからなくなりました。
とりあえず、わたしと奥さんが次に決めたことは、
わたしも奥さんも仕事を完全に休んで、無事に生まれるためだけに専念する
ことでした。
わたしは、フリーのライターなので、仕事を休めばその間、収入はまったくなくなります。奥さんも契約職員なので無収入です。
でも、
死んだらお終い
生きてりゃなんとかなる
そういう言葉を自分が吐くことがあるなんて思ってもみませんでしたが。
それから、娘が無事に生まれるまでの2ヶ月間。まだまだ思いがけない出来事の連続でした。
本当のドラマはここからだったのです。
続きは、高齢出産妊婦さんの苦悩4冷えで胎児異常に!助産院から転院したことをご覧くださいませ。
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)