少子化で子供を産んでほしいという国の思惑とは逆に、女性が子供を欲しがらないのは働けなくなるからです。
働けない=収入がなくなる。
子供を持つということは、そんなにたいへんなことなのでしょうか?
そういう女性とは対照的に次々と子供を産む女性もいます。
どうしてこんなに違いが出るのでしょうか?
それは育児休暇の保証や手当があまりにも違うからなのです。
正社員でなくても、申請すれば育児休暇をもらえることを奥さんの経験から強くお知らせしたいと思います。
非正規社員が妊娠=”自ら”会社を辞めるのマタハラ法則
「高齢出産妊婦さんの苦悩2」で、少しだけ触れましたが、その当時、とある会社の非正規社員だった奥さんが妊娠をして、そのことを人事権を持つ男性上司に話したところ、このように言われました。
「で、いつ辞めるの?」
「いえ、辞めるのではなくて、産休と育休を取りたいんです」
「えっ!そりゃダメだよ。だってあなた正規の職員じゃないでしょ。契約の育休は認めてないから」
「産休はもちろん取れるんですよね」
「取れることにはなっているけど、今まで取った人いないから」
「でも、規定では非常勤でも育休も取れるって書いてありましたけど」
「でも、うちの組織ではそれは認めてないの。非常勤の育休は認めない。そういうこと」
それは、その組織の決まりでもなんでもなく、一上司の権限に一任されていたということです。
そこから、奥さんは、最終的にその組織を辞めることになるまで、その上司からのマタハラ、パワハラだけでなく、女性社員からのマタハラも受け続けたのでした。
働くお母さんにすべての育児休暇の権利を
妊娠すると、母子手帳がもらえます。
わくわくとしてかなり熟読するお母さんがほとんだそうです。
妊娠から出産、育児について詳細な情報の提供と子どもの成長の記録ができるのが母子手帳なのですが、
その情報項目の「働く女性・男性のための出産、育児に関する制度」(2004年当時の情報)に、
子が一歳に達するまでの間、事業主に申し出ることにより、父親、母親のいずれでも育児休暇をとることができます。
(育児休業など男女労働者の育児のための制度)
と、ありました。
社員の皆さんには当然の権利です。
しかし、非常勤やパートの女性には適応されないのです。
それは、
妊娠=辞めてください
を意味します。
当時、奥さんはとある会社で非正規社員でした。
働いてもうすぐ1年というところで妊娠しました。
妊娠した女性は、次の給付金をいただけます。
正社員の場合(2004年当時)
出産育児一時金、育児休業給付金(休業前賃金の40パーセント給付)
育児休業職場復帰給付金(現在は「育児休業基本給付金」と「育児休業者職場復帰給付金」が統合され、「育児休業給付金」として全額、育児休業中に支給されることになりました)非常勤職員の場合
出産育児一時金、出産手当金(休職、退職する場合)、失業給付金
奥さんは育児休暇をとり、仕事に復帰したかったし、仕事を辞めたくなかった。
しかし、働いていた機関は非常勤は妊娠したら辞めてもらうという雰囲気が漂っていました。
日頃から、その上司は、非常勤職員に対して、高圧的な態度をとる人間だったので、奥さんは、なかなか妊娠したと言い出せませんでした。
そこで、庶務課の課長に非常勤が妊娠したらどうなるのかと尋ねてみたら、
「非常勤で仕事を続けた人はいないし、育休をとった前例もない」
と言われました。
また、ちょうど同じ頃に、同僚の正社員が妊娠し、当然のように産休・育休を申請しているのを見て、不公平を感じていました。
そして、頭に疑問が浮かんできます。
正社員と非常勤のお母さんの違いってなんだろう?
(いずれこの違いは、保育園入園申請のときにも関係してきますが、それについてはまた次に)
「事業主に申し出ることにより、父親、母親のいずれでも育児休暇をとることができます」(労働局雇用均等室)
事業主に申し出ることにより、とれる?
非常勤の私で、申し出たら、もしかして、とれるかも?
非正規社員、労働局雇用均等室へ育児休暇やマタハラの相談する
奥さんは電話で、聞いてみることにしました。
自分が非正規であることを告げると、電話に出た方の、
「社会保険を1年有すれば、非正規であっても育児休暇をとることはできます。むしろ後に続く妊娠した女性の方のために、ぜひ育児休暇をとってほしい。」
と。いう答えに押され、奥さんは、つわりと戦いながら社会保険加入1年が経つのを待って、会社に妊娠を告げました。例の上司です。
「どうして3月に言わなかったんだ。」(そしたら契約を更新しなかったのに。と、いうのが本心でしょう)
と、言われましたが、
「4ヶ月の安定期が過ぎるまで高齢出産なので言えませんでした」
と、押し通しました。
同僚の独身女性からは、
「妊娠したら会社迷惑だもの。普通、辞めるよね~」
と、言われました。
年配の男性に言われたのではなく、奥さんよりも年下の男性や若い独身女性がそんなことを言っているのですから、本当に、
想像力の欠如。
自分や自分の奥さんが同じ立場だったら、どうするだろう?
と、いう想像力がまったくない。
他人事を自分事として考えられない。
正社員だから、非常勤の気持ちがわからないのでしょうか?それとも、非常勤をバカにしている?
そのどちらでもないでしょう。ただただ、悪気はないのでしょう。
それを言われた相手がどう思うか?という、想像すらしないのでしょう。
日本という国が、そういう国だということです。
弱者に優しくない。
そもそも、「産休は取れるが育休が取れない」って、なんでしょう。産休が取れても育休が取れないのであれば、仕事を続けるのは不可能です。だから、産休すら取らずに辞めるしかない。産休と育休をセットにしていない時点で、この制度のなんたるやかをわかっていない。
ここだけを考えても、無茶苦茶な話です。
ある2人目妊娠の妊婦さんは独身女性と若い男性から奥さんと同じような嫌みをあからさまに受けたとき、
(一生結婚するな。お前たちの未来を支える子を産むのに、あんたはその子どもたちに助けてもらわないのか?だったら、介護で苦労しろ!)
と、心の中で悪態をついたそうです。
さすが2人目ともなると強いですね。
でも新米お母さんにそのような余裕はなく、ただ傷つくだけでした。
権力を振りかざす者は権力に弱い
上司は、奥さんが、
「育休を取りたい」
と、告げているにもかかわらず、
「当然、辞めてもらう」
と、いう方向で、勝手に庶務課長に報告をあげました。
はたから聞くと、無茶苦茶な話だし、普通の会社員の方が聞くと、ほんとかよ!と、耳を疑うかもしれませんが、これが、現実なのです。
最近になって、ようやく、
マタハラ
と、いう言葉が注目を浴びるようになりましたが、10年前は、このようなことが、当たり前に行われていたのです。
奥さんは負けませんでした。
産休の後に育児休暇をとりたいと庶務課長に直接、申請しました。
庶務課長は、
「非常勤で妊娠した人はいないし、したがって育休をとった人の前例がないから認められない」
と、冷たく事務的に告げてきました。
そこで、奥さんは、雇用均等室の方の指導通りの言葉を告げました。もし、このような状況になったら、雇用均等室の名前を出しなさいと言われていたので、
「労働局雇用均等室に相談したところ、1年以上社会保険に加入した者は育休をとる権利がありますと指導されました」
と、言ったのです。
庶務課長は、顔が青ざめました。”労働局”という言葉を聞いただけで、態度が一変したのです。
権力を振りかざす者は権力に屈するのです。
奥さんはすぐに、庶務課長や上司に言われた言葉を労働局に伝えました。労働局はその直後、庶務課長宛に電話を入れます。
会社は労働局より注意、指導を受け、その結果、
奥さんはその会社の非正規社員初の育休をとることになりました。
何か問題が起きたとき、自分でアクションを起こさないと誰も助けてくれない
奥さんが学んだことです。
会社で、本当の味方はいない。
正規社員の同時期妊娠の女性ですら、見て見ぬふりをした。
だから、一人で、戦って権利を得ました。
しかし、会社にとっては、非常に苦々しい想いであることだけは確かです。
奥さんは、産休、育休をとることはできました。
しかし、育休明け、仕事に復帰はしましたが、そう長く続けることはできませんでした。
マタハラに勝っても、
パワハラには負けてしまったからです。
次回は、そのお話をします。
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(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
2019年になっても、この問題は大きく変わることはありません。
ただ、声をあげる人が増えてきたというだけ救いだと思っています。
なにか行動を起こすことが大切なことです。
心の冷えとりコーチングはこちらもご覧くださいませ。
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。