vol1で、"ママ友という場”に流されず、染まらず、強い態度で自らを貫いた紅子さんのエピソードを話しましたが、今回は、
”染まらず、強い態度で自らを貫いたにもかかわらず、気がついたら取り込まれていた”緑子(仮名)さんの話をしようと思います。
”ママ友はつくらない”と、心に決めていても、逃げ場をすべてふさがれてしまったパターンです。
保育園や幼稚園は、同じ学年に10〜30人くらいしかいません。と、いうことは、ママの数も10〜30人。その小さなコミュニティーの中で、自分の居場所を侵されないようにするのは、至難の技…、というか、もしかしたら、できないのかもしれません。そう思わずにはいられないエピソードです。
ママ友とは関わらないと決めていたのに気がついたらその世界にいたパターン
緑子さんも、子供を保育園に預けて働くお母さんです。彼女の子供の公立保育園にも『パンジー会』(仮名)なる任意の父母会がありました。父母会では、ゴールデンウィーク中の遠足、夏休み期間中のバーベキュー。ハロウィーンパーティー。そして、クリスマス会と、年に4度の行事が行われ、それ以外にも、年に2回、なにかイベントを企画してみんなで楽しむ会(バス遠足や、お笑い芸人を読んでのお食事会など)なるものがあって、そのための費用として毎月会費(これが、けっこうな金額なんです)が集められていました。それ以外にも、母親同士の意見交換の場と称したランチ会が年に2回ほど。そして、お迎えが6時以降になるお子さんのためのオヤツ代の徴収(月¥1000)までありました。
もちろん、パンジー会に入っていないお子さんには、6時以降になっても、おやつを食べる権利はありませんから、「それはあまりにかわいそう」ということになって、結果、パンジー会に入るということになるわけです。
任意でありながら任意じゃない。
”子供を人質に取った”やり方が見え見えです。
緑子さんは、普段は6時前に子供を迎えに行くのでおやつの心配はないのですが、たまに、仕事が伸びて遅くなったときは、子供には、
「おやつ食べないでね」
と、言い聞かせていました。ですが、子供です。たまには食べてしまうのです。と、いっても、お友達がくれたお煎餅一枚とか、その日の余ったおやつのキャンディー1個とか。
それを目ざとく見ていたお母さんが、緑子さんにしっかりこう言います。
「お子さん、おやつ食べてたみたいだけど」
「あ、すみません。そういうときは、きちんと今月分のオヤツ代はお支払いしますから」
「ううん。そういうことじゃないの。いいのいいの。だって子供だもん。食べるなって言う方がかわいそうでしょう。気にしないで。でもね。結局はそういうことになるんだから、お手伝いできなくてもいいから、パンジー会に入ったら?だって、みんな入ってるし。年長さんになったら絶対に入らないといけないんだから、入っといたほうがいいよ」
しかし、実際は、緑子さんの行動をみて、年次が上がるたびに参加しない家族も2、3現れ始めていたのです。
「おやつ代を徴収するのはやっぱりおかしいと思う」
「イベントにみんなで積み立てたお金を払って芸人を呼ぶとか、多数決も取らないて勝手に決めちゃうって。やっぱりあの会おかしいよね〜」
そういう不満の声は、緑子さんの耳にも届いていました。だからといって、緑子さんは、
「辞めたほうがいいよ」「だから言ったでしょう」
などと、パンジー会を批判したり、勧誘するようなことを口にしたことはありませんでした。
緑子さんの願いは、
”ママ友のトラブルに巻き込まれたくない”
それだけですから。
あとから辞めた人にしてみれば、
一番最初に行動を起こすのは難しいが、誰かやってみて大丈夫なら自分も後に続け!
ということなのでしょう。で、ここでおもしろいのが、
「パンジー会に入ると休日もママたちと一緒だし、全然プライベートな時間が取れなくて。緑子さんの言う通りだった。辞めてよかった。ねえねえ、こんど、パンジー会を辞めたママたちで集まらない?」
結局は、群れたがる。その気持ちはわからないではない。そして、緑子さんをグループリーダーにしようという意図が見えます。(こんどはあなたについていこうかな)。まるで、戦国時代の武将です。強い主人(あるじ)を求めて自分の生き抜く道を探っている。
「ごめんなさい。わたし、そういうの、あまり好きじゃないから」
「一緒にランチしたりとか、カフェでおしゃべりしたりとか、きらい?」
「そうじゃないの。辞めた人たちで集まるとか、そういう括り(くくり)がいやなの。ランチしたい人とはするし、お茶したい人とはパンジー会に入っていようがいまいがお茶をするので、どうぞ集まりたい人たちで集まって」
しばらくして、その女性が緑子さんの悪口を言っているという噂話を緑子さんは耳にします。
「緑子さんが辞めたからわたしも辞めたのに、あの人すごい態度が冷たい。あの人には関わらない方がいいよ。ダマされるよ」
(なんでそうなるかな〜)と、思うのですが、緑子さんはすでに達観していました。
「それがママ友の世界だから」
そうなってしまうのが、ママ友の世界。
ママ友の価値観で世界が回っているんですね。
緑子さんの願いは、たったひとつ、
「あと1年。あと1年で卒園なんだから、がまんがまん」
だったそうです。
無事には過ごせなかった最終学年の役員決め
そうしてついに最終学年を迎えました。
パンジー会の最終学年は会長、副会長、広報、会計など役員を引き受けなければなりません。
もちろん、係を今までやってこなかった人が暗黙の了解でその係を引き受けることになります。
その係を決める日の一週間前から緑子さんの子どもは扁桃腺炎にかかり、休園していました。緑子さんはパンジー会には入会していないので、係がまわってくることはないだろうと思っていましが、一抹の不安は感じていました。
と、いうのも、この数日前、一人のお母さんがこういうことを言ってきたのです。
「緑子さんは、今年はパンジー会に入ったんでしょう?」
「入ってないですよ」
「え、だって、最終年は役員がたくさんあって、緑子さんが入らないと一人で二つの役員をやるお母さんが出てくるし、バーベキュー会やクリスマス会だけじゃなくて、卒園の謝恩会もパンジー会が主催だから、会に入らないと謝恩会に出られなくなるよ。それでもいいの?」
このお母さんは、緑子さんに追随して途中でパンジー会を辞めたお母さんの一人です。しかし、保育園最後にして最大のイベントである謝恩会に出るためには、パンジー会に入らないといけないということを、今年、卒園していった子供のお母さんから聞いて、再び、パンジー会に入り直したのでした。その理由は、
「謝恩会はこれから1年かけて謝恩会用に積み立てたお金で準備をするから」
だったら、パンジー会に入らなくてもお金だけ預けていればいいんじゃないの?と、普通は思いますが、強いママ友にそう言われると、
「はい、わかりました」
そう言うしかないんです。そういうものなんです。
結局、入り直したお母さんが、3人いました。だから、入っていないのは、またしても、緑子さんだけ。
「お金だけは払うと言ってもダメなんですよね。だったら仕方ないですよね。うちは遠慮します」
「それじゃあ子供がかわいそうじゃない!」
「強制なんだったら、どうして最初から強制って言わないんですか?それじゃあ任意じゃないじゃないですか」
「強制じゃないけど、任意はあくまで建て前であって、実際は最終年は強制みたいなものなんだよ。それくらい常識的にわかってるって思ってた」
「結局、入らなきゃ、謝恩会にも出ちゃいけないってことなんですね。つまり、強制ってことですよね」
「強制ではない!これだけははっきり言うけれど、強制ではないからね。わかるでしょう。強制じゃないけど、入らないと謝恩会には出られないということ」
いくら話をしても、緑子さんの納得のいく回答なんか得られるはずもありません。そもそも、パンジー会自体が公立の保育園の親たちが勝手につくった団体です。そこで会費をとって、保育園のイベントと称して、入会していないと子供ですら参加できないというシステムを作り上げたのです。
もちろん、法的な強制力はまったくないし、保育園もいっさい感知していない。
仕切っているママ友の思いどおり。だから、
言っていることが、むちゃくちゃ なんです。
でも、権力を持ったママ友には、そんな理屈は通りません。
自分たちが仕切っている世界が正しい。
ルールをつくりだした者が正しい。
突然のPTA役員押し付け宣言
パンジー会の役員決めのその夜、緑子さんのもとに同級生のお母さんからメールが届きます。緑子さんは、その瞬間、熱が下がらない子供の氷を変えていました。
「緑子さんはパンジー会の広報になりました」
緑子さんは慌てて相手に「どういうことですか?」と、返信しました。すぐにメールがきます。
「わたしはただ連絡するように言われただけだから、前学年の係の方に聞いてください」
「わたしはそもそもパンジー会にも入っていません」と、送ると、
「緑子さんは特例でパンジー会に入会していなくても係をやってもらおうということになりました」
「仰っていることが無茶苦茶です。責任者は誰ですか?」
緑子さんのメールの内容は至極当たり前です。それにたいし、
「お子さんのためにやろうという気にはならないんですか?」
(子供のためってなんなのそれ…。脅し文句のつもり?)
このメールで、緑子さんはもう返信する気力をなくしていました。
(そういうことじゃなくて…)
緑子さんは、さすがにこのメールには、心が折れました。と、いうのも、このメールにはそれはそれは多くのメッセージが秘められているからです。
その会議には、緑子さん以外の同級生のお母さんが全員参加していたわけです。緑子さんの子どもが扁桃腺炎で高熱が下がらず一週間も保育園を休んでいるという事情もみなさん知っていました。仲のよいお母さんもいます。その中で誰一人として、反対の意を唱えたお母さんはいなかったのでしょうか?そもそもパンジー会に入ってもいないのに、
”特例”
などという、わけのわからない言葉を持ち出して、
欠席裁判
をして広報に仕立て上げたのです。
(その経緯で誰も異を唱えなかったのだろうか?おそらく唱えなかったのだろう。だから、こんなメールが届くのだ。子ども体調が良くないということを知っているのに、こういうメールを送りつけることに、躊躇(ちゅうちょ)はなかったのだろうか?この人たちは、いったい、どういう神経をしているのだろう…。)
緑子さんは、今まで、他の学年でのママ友のひどいトラブルの話を何度も聞いていましたが、自分たちの代ではそういうことは一度もなかったので、この学年はいい人が多くて本当によかったと思って過ごしてきました。パンジー会に入らないことで、子どもや自分が仲間外れにされるようなこともありませんでした。
だから、そのショックは計り知れませんでした。
と、いうか、
(どういう経緯で、わたしがパンジー会の広報になったんだろう?真実が知りたい。そうじゃないと納得できない)
↓
(よし!やってやろうじゃないの。だったら、とことん言いたいことを言わせてもらおう。どうせ、最後の1年だ。とことん戦ってやろうじゃないの!)
これも、また、女性の不思議なところです。
”女の意地”
て、やつでしょうか。
とにかく、緑子さんは、広報を引き受ける決意をしました。
しかし、その前に、まず解決しなくてはいけない問題があります。
「なぜ、わたしが、広報に選ばれたのか?」
緑子さんは、とりあえず、同級生のお母さんたちに電話をかけて事情を聞いてみることにしたのです。
緑子さんのご主人は、反対しました。
「詳細を聞いたところでもうやると決めたことだし、もしこれが原因で子どもに嫌がらせされても困るから、ここは我慢したほうがいい。きみも入会しないで係をやると決めたんだから、それでもう十分じゃないか」
しかし、緑子さんの決意は変わりません。
「このままだと気持ち悪い。わたしは事の経緯を知って、納得したいだけだから」
そう言い張りました。
「聞くだけ後悔が大きくなるよ。今まで何を言われても何が起きても知らんぷりを決め込んでいたから、被害が大きくならなかったんだよ。ここで、聞き出すようなことをしたら、本当に事が大きくなるよ。しかも、真実がわからないまま、誤解されたまま。きみが一番わかっているはずだよ。ママ友の恐ろしさを。それでもいいの?」
「それでもいい。広報はやると決めた。でも、真実はぜったいに知りたい。わたしは我慢はしたくない」
そして、ご主人が制止するのも聞かず、緑子さんは、前学年の係のママに電話をしたのでした。
つづきは、嘘をついてもPTA役員から逃れたいママ友!ママ友は友達じゃない!!4wをご覧くださいませ。
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
心の冷えとりコーチングはこちらもご覧くださいませ。
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。