不動産トラブルは、契約書をよく読まないとおかしなことが起こることがあります。そんなときはすぐに聞いてみましょう。もしも、質問して必要以上に相手が怒り出すようであれば、何か不都合なことを隠していることがあるはずです。
今日のお話は、普通の女性が不動産の敷金を取り戻すために、自分の頭で考えて行動するまでをお伝えしています。
あなたの傍に相談に乗ってくれる人がいれば安心ですね。
一人で悩まずまずは誰かに相談することも時には必要です。
前回までのお話はこちらもご覧くださいませ。
敷金取り戻し作戦!じらして、スカして、ホッとさせて、意表を突く急襲
「3ヶ月くらい完全に無視をしましょう。ほっときましょう。電話に一切、出る必要はありません。折り返しする必要もありません。完全に無視です。その間に、Fさんが準備できることはしておきましょう」
それから、オーナーから2週間の間に5度も電話がありました。Fさんはすべて無視。留守電話には、どれも、
「日割り金額は決まりました。クリーニング代は300,000円よりオーバーしましたが、請求はしません。契約終了書にサイン捺印をしていただきたいので、早急に自宅にお越しください。この電話を聞きましたら必ず折り返しください」
と、いう同じメッセージが吹き込まれていて、主張は最初からなにも変わりません。Fさんは、その度に、わたしに聞いてきます。
「折り返し、電話をしなくていいのでしょうか?」
「しなくていいですよ」
「でも、かなりイライラしているみたいで…」
「そういう作戦ですから大丈夫です。折り返し電話をかけてFさんはなにを話すつもりですか?」
「て、いうか、電話をしないと、ますますお金を返してくれなくなりませんか?」
「向こうは、最初から返すつもりはないし、早くFさんのサインが欲しいのです。それさえあれば、すべてが終わると思っていますから。向こうも必死なんです。Fさんはサインをするつもりですか?折れるんですか?」
「ぜったいに折れません。でも…電話がかかってくるのが怖いし…」
「そうやって、恐怖心をあおって、考える時間を与えないようにするのが向こうのやり方なんです。その結果、たくさんの女性が泣き寝入りをしてきたんです。女性にとっては怖いです。その恐怖心から解放されたいですから。でもね、向こうだってFさんのことがものすごく怖いんですよ。こうやって戦う女性に出会ったのは初めてなんですから。だから、Fさんが、この沈黙が、向こうに恐怖心を与えているんです。怖いのは向こうなんです。なんの心配もいりません。一ヶ月もすれば、一切電話がかかってこなくなりますから」
まったくその通りになりました。
オーナーから一切、電話がかかってこなくなりました。日割り家賃は返納されないままでしたが、催促はなくなりました。
(オレは逃げてないということを示せたし、同時に、あれだけ恐怖心を植えつけることができた。もうあきらめたんだろう。よしよし)
さぞかし、そう思っていることでしょう。
一ヶ月も経てば、人間、いやなことは、忘れます。なかったことにしようと脳が勝手に判断し始めます。そして、自分の中で、完全に終わったことになります。
そう考えたほうが、楽ですから。逃げ果せたと。なんだチョロいと。だから、犯人は、同じ犯罪を繰り返すのです。常習犯はそうやって生まれます。
だったら、そう思わせてあげるのです。Fさんとのトラブルは、完全に過去のこと。そう思わせることが大事なのです。
敷金を取り戻すという主導権は、常にこちらが握っている。
それからあとは、簡単でした。
Fさんは、まず、最初に、30分無料で弁護士さんに相談できる区民相談室に行って、状況を説明します。
そこで、個人で、内容証明郵便を送って現金の返却を請求する方法と、裁判の少額訴訟制度の存在を知ります。
次に、Fさんは、不動産業務に従事する友人に相談をします。
そして、友人から、
法務局で家の登記簿謄本を取得すること。
区の環境課へ行って、家の取り壊し届けと建設リサイクル法届けがいつ、オーナーから出されてたのかを知るために、その二つの届けの公開請求を行うこと。
を、教えられます。
その結果、次のことがわかりました。
- オーナーがFさんらに退去を依頼してから2週間後に家の取り壊し届けを提出していること。これはFさんが退去する9日前のこと。
- Fさんが退去してから、わずか1ヶ月後に家を取り壊していること。
このことから、
Fさんが退去する前に、家の取り壊し届けを出した本人が、壁の補修とクリーニングをするはずがない。結果、していない。
と、いうことがわかります。
Fさんは、書類のまとめにかかります。
これまで、オーナーからかかってきた電話の通話記録と、わたしとオーナーの通話記録を原稿にまとめ、登記簿謄本や取り壊し届けの書類、賃貸契約書など必要書類をまとめ、
一連の詳細を、時系列に原稿にまとめました。
素人さんにはかなり手こずる作業ですが、時間はいくらかかってもかまいません。
Fさんは時間の余裕があるときに、時間をかけてしっかり作業をすすめました。
気がつけば、退去してから半年の月日が経っていました。結局、それ以降、オーナーからは一度も連絡はありません。Fさんが住んでいた家にはすでに新しい家が建っています。
年が明けました。
オーナーにとっては、すでに、遠い過去のこと。Fさんのことすら忘れてしまったかもしれません。
Fさんは、満を持してオーナーに電話をします。
「日割り家賃と、クリーニング代の返却の件です。ずっとオーナーさんからのご連絡をお待ちしていたんですが、いつになったら返していただけるんでしょうか?」
「電話に出なかったのはあなたでしょう!」
「そうなんですか?」
「まあ、それはいい。日割り家賃は取りに来ていただいて、契約終了書にサイン捺印していただいたら返しますよ」
「クリーニング代は返していただけるんですよね?」
「クリーニングはしたので返せません」
「じゃあ、領収証のコピーをいただけますか?」
「見せることはできますが、お渡しすることはできません」
「クリーニングはやったんですね」
「やりましたよ」
「間違いないんですね」
「間違いありません」
「わかりました。じゃあ、また改めてご連絡します」
Fさんとしては、やはり、事を大きくはしたくありませんでした。だから、もう一度、オーナーの意思を確認しておきたかったのです。オーナーはなに一つ、変わっていませんでした。
敷金を取り戻すために内容証明郵便を送付
Fさんは、内容証明郵便の作成に取り掛かりました。
内容証明郵便とは、文字通り、
郵便局が、書かれている内容を証明してくれる郵便物のことです。
相手に、借金の返済を求めたり、今回のような重要な内容の書類を郵送で送ったとき、あとになって、相手が、「そういうことは書いてなかった」と、言われないようにするために、郵便局が、同じものをコピーして保管し、「その内容で間違いありません」と、証明してくれる郵便物ということです。
Fさんは、友人の不動産屋さんの指導を受けながら、内容証明を自分で作成しました。
その中身ですが、
オーナーが行っている行為が詐欺行為である証拠を示し、期日までに所定の口座に300,000円が振り込まれていなければ、刑事告訴する。
という、内容でした。
オーナーは、内容証明を手にした瞬間から、期日までに、お金を振り込むか、振り込まない場合は、その理由をきちんとFさんに明示しなければなりません。
内容証明には、そういう力があるのです。
そして、内容証明が確かにオーナーのもとに届いたという「配達証明」がFさんのもとに届いたその日、口座を確認してみると、300,000円と、家賃日割り返納分が振り込まれていました。
オーナーのもとに、内容証明が届いたその日に、振り込んだのです。
おそらく、慌てふためいて、銀行に駆け込んだのでしょう。震える手で口座番号を打ち込んで。ただただ、
(どうぞFさんが刑事告訴しませんように…)
と、懇願しながら。
その後、
「契約終了証にサイン捺印してください」
と、何度も言っていたオーナーからの連絡はいっさいなく、未だに契約終了証にサイン捺印はしていません。そんなもの、本当は存在してなかったのかもしれませんね。
(相手は小娘だから、直接、会って恫喝(どうかつ)すれば、簡単に黙るだろう)
そう思っていたんだろうし、そうしてきたのでしょう。
でも、もう、そうは思わないでしょう。
敷金を取り戻すために行動するか、しないか。ただ、それだけの違い
どうでしたか?
Fさんは、特別な女性でしたか?
Fさんは、他の女性に比べて勇気がありましたか? ものすごく機転の利く女性でしたか?普通の女性に比べて行動力がありましたか?
ぜんぜんそんなことはありません。
彼女は、自分が正しいと思っても、恫喝されたら怖くなってシュンとする女の子でした。
負けたくないと思っても、その手段がまったくわからず、右往左往するだけの女の子でした。
行動力が特別勝っているわけでもありませんでした。
ただ、
”諦めなかった”
そして、
”人に相談する”
と、いう行為を繰り返し、
”自分の頭で、考え続けた”
その結果、彼女は、
”行動してみると、案外、簡単なんだ”
と、いうことに気がつくことができた。
Fさんは、言います。
「ものすごくきつくて、本当につらかったんです。でも、やり方さえわかったら、ものすごく楽でした。やっぱり、どうすればいいのかわからない。どうやればいいのかわからないってことがきついんです。でも、わからなければ、聞けばいいし、わかったらとりあえずやってみればいい。やったらどうにかなるってことに気づくことができました。いまは、ものすごく自信がつきました。わたしたちがわからなくて困っていることって、世の中にたくさんあるけれど、その中のひとつでも、解決につながる方法がわかったら、それはすべてに通じるんだろうなって、いまは思えるんです。それが、ものすごい大きな自信につながりました」
「じゃあ、この件は完全に終わりだね。よかったね」
「でも、まだ、謝罪がひとこともないんですよね。まあ、予想はしてましたけど。そこは、ちょっと納得してませんけど、いいです。許してあげます」
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
彼女を自信に導いた風宏の心の冷えとりコーチングはこちらもご覧くださいませ。
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。