安定したいから正社員になりたいという女性がまだまだたくさんいます。
私の奥さんもその一人でした。でも、それが本当に安定なのでしょうか?
会社員であっても、会社がなくなったり、合併したり、変化はあり続けます。
今日のブログは、安定を求めるために人の道に外れてしまった知人のことを例に見ながら、安定について考えるものです。
”安定”って?
人生において、”安定”とはなんでしょう?
わたしにとっては、
体が健康で、心が落ち着いていること
です。
でも、その安定を手に入れるために必要な条件がいくつもあります。
規則正しい生活をして、愛する家族がいて、その家族もみんな心も体も健康で、真剣に打ち込める仕事があって、それなりの収入がある。余暇を楽しむ時間もあって、読書で頭のリフレッシュをして、運動で体のリフレッシュもできる。たまには旅行に行って、自然と触れる。
これに、あとなんだろう?
自分が、誰かの役に立っているという実感が得られたら言うことはありません。
正直に言うと、もう一つ。
もっと自由に使えるお金があるといいな。
そんな感じでしょうか。
わたしは、人より欲の少ない人間だと思っていましたが、こうやって改めて書いてみると、人間って(と、いうかわたし)、本当に欲深いな〜。
そういう意味では、
「安定」
を、手に入れるのって、簡単ではありません。てか、本当にこれだけの欲、全部、手に入れられるのでしょうか?
「安定」
う〜ん…。ちょっと、待てよ。
これだけの欲をもし仮に、全て手に入れることができて、すべてが満たされたら、わたしの心と体は本当に安定するのでしょうか?
正直、わたしは、いまの仕事を心から真剣に取り組み、心から楽しんでいるかと問われれば、
「はい!」
とは、断言できません。正直、答えに詰まるでしょう。辛いことのほうが多いし、体力的にいつまで持つかわからない。そういう不安はずっと付きまとっています。
お金だって、自由に使えるお金なんてこれっぽっちもない。海外旅行なんて14年間も行ってない。
”安定”を得るために、自分にとって必要と思われる条件はちっとも揃ってなんかいやしない。
じゃあ、いまのわたしは、”不安定”なのか?
いえいえ。
そうでもありません。
こうやって、ブログを書くことができる。このように、自分のいまの心情を正直に吐露できる。この状態こそが、”安定”と言わずしてなんと言おう!
そう、わたしはいま、安定している。
冷静に客観的に自分を俯瞰(ふかん)してみると、
「なんだ。わたし、安定してるじゃん」
と、いうことに気づく。
じゃあ、すでに安定しているわたしが、”安定”のために求めているものって、いったい、なんなんだ?いま書いたばかりだぞ数行上に。
……………。
……………。
これって、ただの欲望?貪欲?煩悩?
そうなんだろうな〜きっと。
………。
じゃあさー、聞くけどさー(自分で自分に質問しているイメージ)。ただの欲望を持っちゃダメなの?貪欲は罪なの?煩悩は悪なの?
いやいや、そんなことはない。あってもいいじゃん。だって、それが人間ですもの。
だって、そういうたくさんの欲望が頭の中に渦巻いているから、人間は成長できるのですから。
しかも、
成長に必要なのは、満たされないことから生じるストレスだったり、不安定な状態だったり、苦しみだったりしますよね。
だったら、不安定も苦しみも必要悪ってことになるんでないかい?
「だから、人間は、安定を求める分量と同じだけの不安定を、無意識、意識両方で求めているんじゃないかな?そういう矛盾があるから人間なんじゃないかな?そういう矛盾の中でアベレージを保っているのかもしれない。だって、それが人間ですもの」
なんだか、なにが安定でなにが不安定なのか?自分は本当に安定を求めているのか?よくわからなくなってきたぞ。
さてさて、
では、みなさんにお伺いします。
”安定”って、いったい、なんなんでしょうね?
なにが”安定”?
このテーマを書きたいと思ったのは、ある女性と話をしたことがきっかけです。
その女性は、アンナさん(仮名)。25歳、独身です。
契約社員で、広告代理店で働いています。東京近郊の裕福な家庭に育ち、親が所有する都心の一等地にある3LDKのマンションに一人で住んでいます。いわゆる大金持ちのお嬢様。
毎月、親からの資金援助もあり、経済的には何一つ問題はありません。
しかし、彼女は、「契約社員」という自分の立場にものすごく不満を抱いていて、いくらその会社で働いても出世できないという立場に憤りを感じていました。
彼女は、ある専門職に就きたくて、高校卒業と同時に小さな広告代理店でアルバイトとして働き始めます。そこで2年間働き、その会社の上司に気に入られ、上司の紹介で大企業に契約社員として転職することになりました。それが、いまの会社です。今までやってきたことが活かせる職場でもありました。待遇も少し良くなりました。
仕事は真面目で、サービス残業も文句一つ言わず、黙々とこなしました。要領もよく、仕事もよくできる。社員受けもいい。
しかし、彼女は契約社員。給料は15万円にも満たない。昇給もない。親の援助なしには生活できない状態が続いていました。
彼女もただただ会社に奉仕するためにここまで一生懸命働いてきたのではありません。
「真面目に働いて能力があると認められたら社員に採用される可能性もある」
前の会社の上司の紹介ということもあって、採用のときに、そう言われたから頑張ってこれたのです。
しかし、3年経っても社員採用されません。そのうち、彼女は、
「わたしは本当にこの仕事がしたかったのだろうか?本当にこの仕事が好きなのだろうか?いつまで契約社員なんて安定しない立場で、自立できない生活を続けるのだろう?」
そういう疑問が次から次へと、沸き起こってきます。
22歳になって、自分と同じ年齢のたくさんの大卒の女性社員が入社してきたというのも大きな要因でした。
アンナさんには、新卒社員よりも3年多くのキャリアがあり、能力も彼女のほうが遥かに上です。にもかかわらず、新入社員の初任給は、アンナさんよりも遥かに上。
新人研修期間が終わってそれぞれの部署に配置され、半年もすると、新入社員がアンナさんにあれこれ指示する立場になります。
アンナさんの中で何かがガラガラガラ〜ッと崩れ落ちました。
「やってらんない」
高校卒業から地道に頑張っていた専門職の道をあっさり捨て、他の部署への移動希望を申し出ます。
その会社のいわゆる花形と言われる部署です。もちろん、契約社員として、あくまで社員のサポートという立場の事務職です。
「自分は専門職で職人的な仕事をするより、大企業で出世したいんだってことに気づいたんです。そのためには、その会社の一番のエリートが集まっている部署に行くのが一番の近道だと思いました」
その考え方は悪くないと思います。
そもそも職人的な専門職に就きたいと思った根本には、
「手に職を持って親から独立して、自力で安定した仕事に就いて、安定した生活を送りたい」
そういう思いがあったからです。
だから、
「安定するために私に必要なことは手に職を持つことじゃない。社員として出世することだ」
そのように考え方が変わっても、おかしなことではありません。
時期尚早な気がしないでもありませんが、彼女なりに一生懸命に考えて出した結論なのでしょう。
しかし、そこから、彼女の描く”安定”への道は、わたしが考えていたのとは、まったく違った方向へ進み出したのです。
わたしは、”安定”したい!
とにかく、アンナさんは安定したかった。そのためには、社員採用してもらうことが一番の近道と考えました。
「そこをやめて、他の会社を探すことは考えなかったの?」
「3年間もその会社のために奉仕してきて、会社のこともよくわかっています。社員よりもわたしのほうができる仕事もたくさんある。しかも、大企業ですよ。本来ならわたしのような高卒の23歳の女なんて絶対採用してもらえないと思うけど、そのままなんとかコネを利用して、社員採用してもらうのが、一番の近道じゃないですか。そんなチャンスを逃がすようなことはできません」
「コネ?コネを利用するの?積み上げてきた実績で中途採用を狙うのではなくて」
「中途採用だって、わたしのような学歴じゃ無理なんです。高卒ですよ。大卒じゃないと無理なんです」
「まあ、そういう採用条件だったら無理なのかな〜。だからコネ?親の?」
「違いますよ。親のコネは使いたくないんです。親から独立するために働き出したんですから。わたしにもプライドはあります。女の武器です」
「女の武器?女の武器って……、そういうこと?」
「そういうことですよね。こうなったら使えるものはなんだって使います。だってわたしはこの会社に就職したかったんです」
「どうしてそこまでして就職にこだわるの?」
「自分の力で安定したかったんです。もう、不安定な立場でいたくなかったんです」
「社員じゃないと安定してない?」
「もちろんそうです。だって、わたしもそうだし、風さんだってそうですよね。なんの権力もないじゃないですか?フリーって言ったって、人に使われるばかりじゃないですか。体を壊したってなんの保証もない。会社が解雇しようと思ったら簡単にクビになってしまう。わたしは親を見ていて権力がどれだけ強い力を持っているかよく知っています。社会では金と権力を持った人間が一番強いんです。わたしは不安を抱えたまま生きていたくないんです」
「なるほど…。言われてごもっともだし、反論する気にもならないね。で、移動して2年経つけど、その女の武器は役に立ったの?」
「今では、前の上司も、その前の上司も。そして、いまの上司もわたしの言いなりですよ」
「え? 3人もいるの? え ?そうなの?」
「実際はもっといますけど。フフフ……」
「は? そうなの? それで……満足しているの?」
「だって、むちゃくちゃ楽しいですよ。彼らをコントロールしているのはわたしですから。社内の秘密だって全部知ってますからね」
「秘密ってなに?」
「誰と誰が付き合ってるとか。誰が不倫をしているとか」
「ああ、そういう秘密ね。それが、楽しいの? まあ、噂話としては面白いよね」
「もう最高ですよ」
「で、そういうことを知って、アンナさんにとって、なにかプラスになることがあった?」
「プラスになることばかりでした。だって、ただの契約社員だったころは、時間まで仕事をして終わったら家に帰ってコンビニ弁当を食べて1日がそれで終わってたのに、いまは美味しいものが食べたいと思ったら連れていってもらえるし、いろんな偉い人に紹介してもらえるし。生活が全然変わりました」
「偉い人っていうのは?」
「上司の取引先の社長さんとか、大企業の管理職の人とか。わたし、すごい可愛がってもらっているんです」
「それが楽しくて仕方がないと」
「そうですね。最高に楽しいです」
「で、社員にはなれるの?」
「てか、もうなりたいって思ってません」
「そうなの?」
「権力を手に入れましたから」
「手に入れたの?」
「彼らはわたしの言いなりですから」
「そうなのかな?」
「風さんにはわかりませんよね。だって、お金も権力も持ってないですよね。持ってない人にはわかりませんよ」
「そう見える?」
「見えますよ」
「そう?じゃあ、もう社員になる気はない?」
「ないですね」
「じゃあ、どうなりたいの?」
「社員ってこき使われるばかりです。契約社員よりはいいけれど、社員も同じです。出世しても社長にはなれないじゃないですか。上司とか、管理職とか言っても、ちっちゃい男ばっかり。なんか、会社員って虚しいですよね。わたしやっぱり権力のある人とか、お金が大好きなんです。もっともっと、いろんな偉い人にあって、たくさん勉強して、それからどうするか考えます。起業するのか、結婚するのか。とりあえず、お金には全然困ってないので。わたし、このままで終わるつもりはないですから」
「安定したいって言ってたけど」
「いまはものすごく充実しているので、わたし、安定してますよ」
彼女から直接聞いたのではないですが、
彼女は現在5人の男性と同時に付き合い、そのうちの3人は妻子持ちでそれぞれ別の大企業の管理職だそうです。
「社員にならなくても、力のある男をコントロールできれば、いくらでも望みを叶えてくれる」
そのように女性友達に吹聴しているそうです。
数年前まではジーンズにスニーカーばかりだったファッションは、ミニスカートにハイヒールに変わり、ちょと太めだった身体のラインもみるみる細くなりました。
いつでも余裕なさそうにあたふた動いていた雰囲気は微塵もなく、馬の蹄(ひづめ)のようにヒールの音を響かせて胸を張って歩いています。
アンナさんのことをよく知る女性たちは、そんな彼女のことをどう思っているのでしょう?
「お金には全然困ってなかったはずなのに、どうして、ああなったのか全然わからない。」
「突然、ミニやヒールをはいてきたときに、あれ?どうしたんだろう?って思ったんです。あのときがターニングポイントだったんだろうなって。彼女の変貌ぶりには、呆れるというのを通り越して、びっくりしたとしか言いようがないです。なにが彼女をそうさせたのか、わたしたちにもさっぱりわからないんです」
「わたしたちが知らなかっただけで、もともとそういう素養があったのかもしれない。そうなる前は、親の影響が強くて自分を抑えていただけなのかも」
「彼女がそれで幸せなら全然いいと思う。どうせなら、とことん行くところまで行って、どうなるか見てみたい。ビッグになってほしい」
そんなお友達に「アンナさんは以前よりも安定したのかな?」と、尋ねると、一様に、
「安定していると思いますよ。だって、ものすごく自信にあふれているし、前の部署よりも全然楽しそう」
そう答えるのです。そして、さらに、「うらやましい?」こう尋ねると、一様に、
「全然うらやましくない。ああだけはなりたくない」
”安定”の定義なんてころころ変わる
前回の「ママ友と子供いじめ11〜価値観の共有?強要?」でも書きましたが、
人間の価値観は、気がついたら親の価値観を受け継いでいて、成長の過程で自我に目覚め、新しい価値観が生まれ、培われ、古い価値観とのせめぎ合いの中でストレスを感じ、悩み、新しい自分というものを作りだしていきます。
それもこれも、
心の安定を求めるがためです。
アンナさんは、いま、自分のことを、
「安定している」
と、断言しています。
でも、それは、はたから見れば、決して”健全”とは思えません。
”モラル的にどうなの?”
と、いう意味で。
おそらく、これを読む男性の大半は、
「ただのヤリマンじゃん。男は据え膳を食ってるだけだよ。彼女はなんの恩恵も受けられないよ」
そう思うでしょう。
女性も、
「不倫はよくない」
「そうまでしないと安定しないなんて、間違っている」
そうお思いになるでしょう。
わたしは、この話を聞いて、正直、こう思いました。
「もっと自分を大事にしたほうがいいよ」
わたしが改めて言わなくても、これくらいのことは仲の良い友達なら、何度も伝えているでしょう。
アンナさんもこれくらいの批判があることは、十分承知していることでしょう。
それでも、彼女は、
「いまの自分が一番安定している」
と、断言できるのです。
「わたしは安定したい!」
常にこう訴え続けた女性が、わずか数年後に、こう言ったのです。
「わたし、このままで終わるつもりはないですから」
モラル的な良し悪しは別として、アンナさんが、
「安定したい!」と、いう思いを追い続け、自分を抑えるのではなく、そこに正直に反応したことは、決して悪いことではありません。
耐えて、我慢して、押しつぶされて、自分が壊れるくらいなら、ちょっと人から外れた道を進むことになっても、それはそれで良いことだと、わたしは思います。
ただ、その手段の結果、人を傷つけることになってしまったら、人を傷つけることが明白であるならば、その道へ進むべきではないことを付け加えたいと思います。
なぜなら、
人を傷つければ、必ず自分が傷つくからです。
自分を大事にしない人は、他の人を大切にできません。
5年後の彼女は、そして、10年後の彼女はいったいどうなっているでしょう?
アウトローへの憧れ
わたしも安定を求めて大卒後、会社員になりました。
その前までは、映画や舞台に関わる仕事がしたいと思って上京しましたが、夢破れ、安定を求めてサラリーマンへ。
そこで、精神の安定が保てず、フリーライターの道を進むことを選びました。
フリーライターの生活は、経済面だけを見ると、全く安定してません。なんの保証もありません。会社の上司や先輩は、そんなわたしのことを、
「絶対にうまくいかないよ。会社員できないような弱いやつが、一人で生きていけるはずがないだろう」
そう言って、嘲笑しました。
あの当時、世はバブル崩壊後の混沌とした世界。
理想の男性像の三高(高身長、高学歴、高収入)神話が崩れ、「結婚するなら公務員」と叫ばれ始めた時代です。そんな時代にフリーライターになるなんて、ある意味、アンナさんよりもずっと変な目で周りから見られていたかもしれません。
「もう少し、自分を大事にしたほうがいいぞ」
そんな言葉もかけられたと思います。
でも、いま、わたしは安定しています。
フリーライターになって23年間、ただの一度たりとも、心が不安定になったことはありません。脳腫瘍になって死を意識したときも、心は凪のごとく安定していました。
それは、なぜか?
家庭が安定している? はい、そうだと思います。
健康面が安定していないから? はい、そうだと思います。
いまの仕事が向いているから? はい、そうだと思います。
向いてはいるけど、好きではないから? はい、そうだと思います。
たくさんの人に会えて、刺激を受けられるから? はい、そうだと思います。
仕事で危険な目にあう可能性が高いから? はい、そうだと思います。
お金をたくさん貰えるときがあるから? はい、そうだと思います。
お金が全然入ってこないときもあるから? はい、そうだと思います。
良いことも、悪いことも、バランス良くわたしの心を刺激してくれる。
だから、
わたしは安定していられるのだと思います。
良いことも悪いことも半々。
つまり、
中庸です。
だから、ちょうど真ん中で、多少上下にブレがあっても、振れ幅が広くても、ちょっとのことでは動揺せず、いままで安定して生きてこれたのではないだろうか?
わたしは、自分のことをこのように分析するのです。
人は、
安定を求める反面、
心のどこかに、それに反比例する、
アウトローな生き方を求めるものなのではないでしょうか?
続きは風宏の心の冷えとり「安定」ってなんですか?2結婚したいをご覧ください。
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。