自分の身を守るのは自分だけです。最近では、刑務所の防犯対策もゆるくなっていて、囚人が逃げ出す事件も起こりました。
ますます自分の身は自分で守らなければなりません。
女性が自分の身を守るためにどのような防犯対策をしたら、よいのでしょうか?
私はライターとして、たくさんの事件にかかわってきました。
実際に起こったことや取材などから、私の考える女性の防犯対策で必要なことをお知らせいたします。
女性の防犯で間違えてはならないこと
一週間ほど前のこと、時刻は平日の午後9時。
わたしは、ジーンズにTシャツという出で立ちで、自宅マンション目の前のコンビニへ買い物に行きました。缶酎ハイ3本に氷一袋。ファミリーマートのロゴの入った袋を左手に持って自宅マンショへと戻ります。
マンションの敷地に入って、10メートルほど真っ直ぐな誘導路があってその先にオートロックのドアがあります。
わたしが敷地に入ったとき、オートロックのドアの前では、二十歳前後の女性がちょうどバッグから鍵を出そうとしているところでした。
わたしの気配を感じたその女性は、驚いたような表情でこちらを見たので、わたしはその女性と目が合いました。女性は、わたしの方を睨(にら)むように見据えたまま、慌てた感じで鍵をセンサーにかざし、マンション内に入っていきました。
わたしにしてみれば、これだけでも、かなり不快です。
「えっ?おれ、睨まれるようなこと、なんかした?」
と、いう感じです。でも、
(若い女性が、こんなオヤジと同じタイミングでマンションに入るのは嫌だろうから、ああいう態度を取られるのも仕方ないか。よくあるよくある)
そう思い直して、女性の露骨な態度にまったく気付かない鈍感なオヤジのふりをしてオートロックのほうへ歩いていきました。
しかし、おかしなことにオートロックドアは開いたまま。タイミング的には閉まっていてもおかしくないのに、開いたままなのです。
なんだ?
と、思いつつドアに近づくと、その女性がセンサーが感知するドアの内側のところに立ってスマホをいじっている。別にわたしのために開けておいてくれたということでもないらしい。
(わたしを避けるように先を急いだのに、なんで立ち止まってるんだ? ???変な女)
そう思いましたが、わたしも立ち止まることも引き返すこともできません。そんなことをすると却って不審に思われるからです。
仕方なく、開いたドアのそばに立つ女性の横をすり抜けるようにマンション内に入りました。すると、その女性はわたしの背後に回るように動きました。
(???変な動きだぞ…)
わたしは職業柄、視界に入る人や物の動き(車や自転車)が、「通常こう動くだろう」という予測と違う動きをした場合、イレギュラーな気配を感じ取る能力に長けています。特に視界のギリギリ端のところで変な動きがあると、考えるより先に体が反応して振り返る、あの感覚です。
明らかに、女性の動きは、わたしを支点とした動きだったのです。
(おれの背後についた…)
背中の辺りに変な気配を感じた瞬間、カシャカシャカシャッ!!!
シーンと静まり返ったマンション中廊下でシャッター音だけが響き渡ったのです。
その女性の動きといい、タイミングといい、わたしを背後から撮影したことは明らかでした。
まさか、写真を撮られるとは思ってもいませんから、わたしの体はその瞬間、ビクンッとなりました。が、同時に、それを悟られないように平静さ、というか、鈍感さを装うために、(何も聞こえてはいないよ〜)と、いう感じの緊張感のない背中に見えるように咄嗟に振舞いました。
後ろを振り返って、
「いま写真撮りましたよね」
と、問い詰めたい衝動を必死で抑えながら、
(なんで、こんな性犯罪者のような仕打ちをうけなくてはならんのだ)
との、憤りを必死で堪えながら、
そのまま、はらわたが煮えくり返るような思いを噛み締めて自分の部屋へと向かっていったのです。
そして、部屋へ入るなり、考えました。
コンビニからこの部屋までのわずかな距離の間に、わたしは彼女に不審がられるような行動をとっただろうか?
いやいや、絶対にない。わたしの頭は、早くお酒を買って帰らないと、「なんでいっつもご飯直前になって気づくの!?」そう怒鳴って食卓について待つ奥さんに怒られる。「パパ相変わらずだね〜」そう言って呆れる娘のために急いで帰らねば! その思い一つきりだった。缶チューハイ以外には何も視界には入ってなかったのだ。
もしかしたら、彼女もコンビニにいて、たまたまわたしより少し先に出てしまって、変なオヤジがくっついてくると思っていたのだろうか?
かりに、彼女がそう思ったとしても、だからといって、写真を撮りますか?
これが、彼女の防犯対策なのだとしたら、
あなた、それ、間違いですよ!かえって、自分の身を危なくしますよ!
そう言ってあげたかった。
女性の防犯での正しい身の処し方
さて、この場面では、彼女はどう振舞うべきだったのでしょうか。
まず、オートロックの場面です。
もし、彼女がわたしを「不審者かも…」「あとをつけてきたのかも…」と、感じたのであれば、先にオートロックを開けるべきではありませんでした。
わたしが大学生のころ、知人の女の子が襲われるという事件がありました。
彼女は、「あとを尾けてきているな〜」と、感じた不審者から逃れるべく後ろを振り返ることなく自宅マンションへと急ぎ、オートロックドアを開け、自宅の部屋のドアを開けたところで後ろから押し倒され、首を絞められました。物音を不審に思った隣人が部屋から出てきてくれたおかげで、犯人は逃走。彼女はことなきを得ましたが、犯人の顔はまったく見ることができませんでした。
「怖くて後ろを振り返ることができなかった。まさか、マンションの中まで付いてきているとは思わなかった」
彼女はそうわたしに説明してくれました。
でも、彼女は自分の気持ちを勘違いをしています。
「付いてきているとは思わなかった」ではなくて、正確には、
「付いてきているはずがない。そうであってほしい」
なのです。でも、潜在意識は、「付いてくる」ということを知っていたのです。だから、彼女は後ろを振り返ることができなかった。恐怖の確信を持つのが恐ろしかったから、現実から目を逸らしてしまったのです。
潜在意識、言い換えれば、この場合、直感です。
直感は、
「付いてくる」
ことがわかっていた。のに、勘違いであると思い込もうとしてしまったのです。それが、被害を大きくした最大の過ちでした。
このことからもわかるように、
本当に相手が不審者だった場合、
不審者よりも先にマンション内に入るのは、明らかに間違いなのです。
事実、わたしも開いたままのオートロックドアからマンションに入りました。
わたしの場合は、女性が、わたしが開いたままのオートロックドアから入るかどうかを、あえて、試したのだと思いますが、それはもっともっと危険な行為です。
彼女は、わたしがマンションの住人であることに疑いは抱いてなかったのでしょう。だから、そんな大胆なことができたのです。
万が一、自分を尾けてきたのであれば…、と、いうわずかの可能性のためだけにわたしを通して先に行かせ、背後から写真を撮った。「マンションの住民でも、ご近所さんでも自分を変な目で見ていたら、わたしはこうやって対抗するわよ!」と、いう意思表示だったのかもしれません。
でも、そんなことをやっても、なんの意味もありません。逆に危険を自分から引き寄せるような行為です。
わたしは、はらわたが煮えくり返るような憤りを感じていました。
もし、わたしが、血の気の多い、見境のない人間だったら、どうなっていたでしょう。振り返りざまに殴りかかったかもしれません。胸ぐらを掴んだかもしれません。そのときはなにもしなくても、怒りがあとになって増幅するかもしれません。
彼女は、間違った自己防衛方法によって、かえって、相手の怒りを買う可能性が大いにあったのです。これはあまりに危険です。
彼女の行為は、「わたしはひるまない!」という自己のプライドを満足させるためだけです。それが大事なのもわかります。でも、やり方を間違えてしまっては、元も子もない。
では、どうするべきだったのか?
一旦、その場所から離れ、わたしを先に行かせて、わたしが鍵を持っているかどうか、確認すべきでした。
鍵を持っていて先に入られたら、それならそれでオーケーです。女性はちょっと間を空けて入ればいいだけです。もし、わたしの住むマンションが10世帯ほどしかない小さなマンション(実際は400世帯以上の大規模マンション)だったら、
「先に待ち伏せされて部屋位置を特定されるかもしれない」
そういう不安もあるかもしれません。だったら、一度、人目のある明るいところに回避すればよいのです。コンビニでも構いません。それこそ、近くの交番に行くのだって全然問題ありません。
「マンション前に不審者がいたので、怖くて入れません。玄関まで一緒についてきていただけますか?」
そう言えばいいのです。「そんな大げさな」そんなことを言うお巡りさんはいません。まったく問題はありません。近くに交番がなければ110番です。すると、10分くらいでお巡りさんが飛んできてくれます。
「110番なんて大げさすぎます」
そんなことありません。そういうときのために110番はあるのですから。そこで、躊躇して自分一人でなんとかしようとして、かえって大げさなことになる可能性だってあるのです。
被害を受けてしまったら、ことが大きくなります。自分の身を守るどころか、被害者ということで、逆に顔や名前をさらされる結果を招く可能性があることは、昨今のネット事情を見れば明らかです。
危ないと思ったら、自分でなんとかしようと思ってはいけません。
人に頼るのです。
それだと、なんだか、負けたような気がしますか?
弱い女性だと思われたくないですか?
プライドが傷つきますか?
負けたくないというプライド?あなたの身体?大事なのは女性の防犯です。
自分の身を確実に守るためには、一旦その場を離れるのがいい。そして、人目につく明るい場所に避難する。もしくは、警察に頼るのが賢明。
そう言いました。
その場を離れたら、なんとなく負けた気がしますか?
弱い女性だと思われたくないですか?
プライドが傷つきますか?
警察に頼るのは恥ずかしいですか?
それとも、同じマンション住人から「不審に思った」ということを感づかれたくないからですか?
「咄嗟(とっさ)のときに、そんなことなんて、いちいち思っていませんよ!」
そうですか?よーく日頃の自分の行動を思い直してください。顕在意識ではそんなこと考えていなくても、その心の深いところにコールタールのようにこびりついた、プライドの高い潜在意識が、咄嗟の時ですら、そういった行動を起こさせているのではないですか。
そのことが、よくわかるのが、車の運転の乱暴な女性(勘違いしないでください。女性ドライバーが全員そうだと言っているのではありません。あくまで、運転の乱暴な女性の話です)。ハンドルを握ったとたん、運転が乱暴になる女性がたくさんいます。男性だと、サンデードライバーの方に多い気がします。
車線変更をしようとしたとたん、間を詰めるドライバー。車線合流地点で一台一台交互に合流するのが暗黙の了解なのに、入れさせないように必死に間を詰めるドライバー。歩行者信号が赤になり、それでも渡る人にクラクションを鳴らすドライバー。公共の駐車場内でスピードを落とさないドライバー。「バックで止めてください」と、書いてあるのに頭から突っ込むドライバー。デパートの駐車場に並ぶ列をやたら詰めるドライバー。
上に書いたことで、交通違反は、何一つありません。でも、こういう癖のあるドライバーに、
「やめたほうがいいよ」
と、言うと、必ずと言っていいほど、こういう言葉が帰ってきます。
「大丈夫。だって、わたし悪くないから」
「はい。確かに事故が起きなければ大丈夫。相手の反感を買わなければ大丈夫。事故が起きなければ悪くありません。でも、事故を起こす確率が高くなるから、やめたほうがいいんだよ」
「大丈夫。事故起こさないから」
素直に言うことを聞いてくれる人は皆無です。
こういうタイプの方に足りないものはなにか?
価値観の共有意識です。
ドライバーとしての価値観に、世間との擦れが生じているのです。しかも、その擦れが交通ルールと関係ないところで生まれているので、事故でも起こさない限り、指摘されることも咎められることもありません。
世間の価値観よりも、自分の価値観を優先させることによって、より事故の可能性を高めているのです。
間違った防犯対策もそれとまったく同じです。
まったく意味のない、なんの価値もない自己満足のプライドを優先させるようでは、身を守るどころか、自分から火に飛び込んでいるようなものです。
大切なのは、そんなプライドではありませんよ。
人様の命!自分の命!
ですよ。
女性の防犯のための挨拶
不審者から自分の身を守るために、もう一つ、大事な要素があります。
怪しいと思う不審者が、近くにいたら、その人物の顔をはっきりと見るということです。
それは、相手からしてみたら、「顔をみられた」と、いうことになります。
これは、とても大事なことです。
暗い路地を歩いていて、突然、家の軒先がパッと明るくなってビックリするなんてこと、ありますよね。でも、あのシステムの出現のおかげで、住宅街での防犯率は格段に上がったのです。
不審者の身になってみると、よくわかります。不審者は明るいところが大嫌い。それは、顔を見られるからです。
その場に誰もいなくても、パッと明るくなると、フラッシュを焚(た)かれたような感覚になるといいます。そんな場所で犯罪を犯そうなんて思いません。
それと、同じ。
相手の顔をはっきり見る。それは、相手に対し、「顔を見たぞ!」というこちらの意思表示になる。
では、どうやって?
ジロリと盗み見しますか?わたしがされたように睨(にら)みつけますか?
相手が、本当にストーカーのような不審者だったら、それも有効手段かもしれません。
でも、あなたが勝手にそう思い込んだだけだったら、相手に不快な印象を与えてしまいます。それが、かえって、危険を招くかもしれません。
だったら、どうすればいのか?
挨拶をすればいいのです。
「こんばんは」
と、挨拶をしながら、ニコリと笑う。そのときに、相手の顔をはっきりと見るのです。
「はっ?なんでそこで挨拶が出てくるの?不審者に対して挨拶?ありえない」
そう思った方。では、試しにやってみてください。同じマンションの全然知らない人に。
ここでの挨拶の目的は、不審に思った相手の顔をはっきりと見る。
と、いうことです。良い人に思われるためにやるのではありません。
いとも簡単に相手の顔をはっきりと見ることができますよ。
そこで、考えてもみてください。
挨拶をされた側が本当に不審者だったら、どういう態度に出るでしょうか?
心底、ビックリするでしょうね。家の軒先がパッと明るくなった以上に。
そして、そんなあなたにスキがないと、感じるでしょう。
相手が不審者じゃなければ、
挨拶をされて気分を害する人なんて一人もいません。
あなたを好感の持てる人物として記憶するでしょう。記憶されたことで、その人の目は、あなたを見守る目になります。
欧米に旅行に行ったことのある人は思い出してみてください。
すれ違いざまや、キョロキョロしているときに、目と目が合った瞬間、必ず、相手は、ニコリと笑いませんか?
トイレですれ違いざま、からなず、外人さんはニコリと笑うでしょう?
あれ、なんでだと思いますか?
みんながみんな、やたら愛想がいいだけだと思いますか?
自分は危険な人間ではないということを意思表示していて、同時に、あなたがニコリと返すか、観ているのです。その反応であなたが危険な人物ではないのか、瞬時に判断しているのです。
それが、習慣的に無意識にできている。
狩猟時代から戦いの歴史を歩んできた民族の遺伝なのです。言葉の違う民族同士、敵ではないと意思表示をするのにもっとも手取り早いのが、笑顔だったのです。
たしかに、日本人は、欧米人とは歴史も習慣も違いますが、
自分の身を安全な平和な方法で守る。
と、いう意味においては、もっとも有効だとわたしは思いますが、いかがでしょうか?
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
お話のつづきはこちらへどうぞ!
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。