派遣社員から社員になった佐江照さんは、上司、先輩からの数々のパワハラをどのように克服していけば良いのでしょう?
ただ、これはあくまで、佐江照さんのパワハラをわたしと共に解決すべく導いた結論であり、動いた結果です。
佐江照さんは泣き寝入りせずに解決方法を探したからこそ、解決方法が見つかったのです。
(この記事は冷えとりコーチングのクライアント佐江照さん(仮名)の了承を得てご紹介しています。)
誰にも通じる方法ではありません。
ご参考までにお読みいただければありがたく存じます。
前回までのお話は幸せをキープする方法をご覧くださいませ。
パワハラで悩む時は仕事以外の目標をもつ
こんなこと、よくありませんか?
「今の仕事が全然楽しくない。きつい。つまらない。
だから、散々悩んだ挙句、転職活動を始めた。何となくやってみたいな〜って思っている業種で一から始めてみよう。
その途端、どういうわけか、今の仕事が楽しくなってきた。きついけど耐えられる。つまらなかった仕事がどういうわけか楽しく思えてきた。
え?どうしよう?転職しようって決めたのに・・・・」
こんな経験です。
ここまで極端じゃなくても、
「職場では大した仕事を任されていないし、退屈だし。
人との付き合いも苦手だから仕事の後も結構暇を持て余してるし。
このあたりで自分を変えないとな〜。
だからと言って何をすればいいかわかんないし、やりたいこと別にないし・・・。
とりあえず、スポーツクラブの会員になって週2くらいのペースで運動でもすっかな〜」
そう思って会員登録をした途端に、
「重要な仕事を任されちゃった。どうしよう?スポーツクラブの会員になったのに、全然行く暇がなくなっちゃった」
どうですか?
誰にも経験があると思います。
そんな時、人は、
「たぶん、今の仕事をもう少し頑張れってことなんだろうな〜」
だとか、
「新しいこと、それ本当にやりたいこと?って、聞かれてる感じがする」
そういう理由付けをして、自分を納得させようとします。
でもね、わたしは常々こう思っています。
新しい目標を持つということは、外に目を向けるということです。
今までは、会社の中の世界が自分の世界の全てだと思い込んで苦しんでいたものが、外に目を向けることによって、自分のいた世界が少しだけ小さく感じることができるのです。そのぶん、問題も少しだけ小さくなるというわけです。
視点を変えるというやつですね。
外から会社を見てみると、小さな四角い箱に過ぎない。確かに現状、自分の生活の中心はこの小さな箱と会社の往復に過ぎないかもしれないけれど、外には他にもいろんな楽しいことが待っている。
四角い箱の中にいるときは、あたかも囚われの身のように感じていたけれど、実は、誰からも囚われてなんかいない。
外に出ようと思えばいくらでも出られるし、自分は自由なんだということに気づけるはずです。
そのことを知るだけでも、あなたの凝り固まった思考が変わる可能性があるのです。
つまり、
新しい目標をもち、実際に動き出すことで、全てのリズムが変わるのです。
だから、
つまらない、きつい、辞めたいと思っていた仕事もなんとなく楽しく思えるようになった。
今の仕事がきつい、つまらないだけで全ての時間が埋まってしまうと、職場から離れても遊ぶ気力すら湧かないものです。
「早く家に帰って一人になりたい」
「早くお風呂に入って布団に入りたい」
それはそれでストレス解消にはなるかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。
なぜなら、
家に帰っても、お風呂の中でも、あなたの頭の中はまだ会社の中にいるから。
これは、身体は自由に動き回っても、頭の中が四角い箱の中に囚われている状態です。
頭の中もしっかり外に出す。
全てを解放してあげるのです。
パワハラで悩む時に行うこと
一人になれる時間をしっかり確保した上で、”外に出る。人と会う。”という時間を作る必要があります。
仕事は人との繋がりがあって初めて成立します。
仕事をする限り、人との繋がりを断ち切ることはできません。
会社の人とのコミュニケーションがうまくいかないのであれば、それを他に求めてみてはいかがでしょう?
佐江照さんには、現状での転職は考えられません。年齢的なことを考えても新しい転職先が簡単に見つかるとも思えません。
だからと言って、職場での環境を変えることも簡単ではありません。
氷上さんと根田見さんと接点を持たないようにできればいいのですが、それも難しいでしょう。
パワハラがなくなる可能性も現状、ありません。
だから、一つの方法として、救いを外に求めるのです。
アフターファイブ、休日をほとんど一人で過ごしていた彼女に、
「なんでもいいんです。体を動かして見ませんか?」
そう提案をしたのです。
「でも、わたし、ほとんどスポーツというものをやったことがありません」
「一度はやって見たいと思ったスポーツはありますか?」
「クラシックバレエをやって見たいと思ったことがありますが、この歳からやるのはちょっと・・・」
「騙されたと思って、やって見ましょうよ。とりあえず、ネットで調べて見てはどうですか?」
ほとんど強引でした。
そこで、彼女が見つけたのは、週に一回、地域のコミュニティセンターで実施されている40〜50代の初心者の女性向けのクラシックバレエ講座でした。
「お金持ちの趣味だと思ってましたけど、わたしのような女性が結構いて、格好も普通のジャージで良かったりと、かなりハードルが低いので気持ちよく入ることができました」
それから数日経ってからの彼女の言葉です。
「みんなレオタードを着て、髪もしっかりセットして。それに比べてわたしはジャージで髪は普段のままで・・・なんて気持ちが弛んでいるんだろうって・・・・。全身が写る鏡の前に立った時の自分の姿を見てゾッとしました。会社で悩んでいると、こんなにも日々の生活にも気力を失っていたのかって。こんなにも見た目がだらしない感じになっていたのかって、改めて気づかされました。形から入ることも大事なんだなって、そんなこと、久しぶりに思いました。もっと見た目からしっかり引き締めようって。気合って言葉、大嫌いなんですけど、自分、もっと気合入れろよ!って思いました」
「実はわたしには、60歳くらいになったら小さなお店でもいいので地元でカフェをやりたいという夢がありました。そんなことすっかり忘れていたんですけど、バレエ講座の仲間と話していたら思い出して。この歳でバレエを習いに来る女性って、わたしのようにちょっとだけ現状に不満を持っていたり、先のことが不安だったり。みんな、辛い中でなんとかしようって思っているんだなって。だから、仕事はまだ辛いですけど、カフェ資金を貯めるために仕事を頑張ってみようかなって。そう割り切れば、ちょっとだけ頑張れそうな気がします」
「いずれはカフェをやるんだって思えば、派遣の時のお給料でもなんとかなるってことに気づいたんです。だから、嫌だったらいつでも辞められるかなって」
「辞めようと思えばいつでも辞められる」
その思えただけで、かなり心が楽になると思います。
そう思えたのも、外に目を向けたから。
仕事以外の目標を持ったからに他なりません。
パワハラで悩む時、心療内科で診断してもらう
「心療内科」によくないイメージをお持ちの方は、まだまだたくさんおられることでしょう。
でも、
「これもコーチングやカウンセリングと同じ、一つの意見として話を聞いてみる」
今は、そういうスタンスで気軽に門を叩く人も増えています。
かつては、
「心療内科に通ったことが人事にバレると、営業から事務に異動させられる。だから行けない」
そういうエピソードをたくさん耳にしました。
でも、今は駅前ビルに専門医院が入り、大きな会社では専門の医療スタッフやカウンセラーが常備する時代になりました。
心の病気は、今や、風邪ひきと変わらないほど誰にでも起きてしまう世の中になりました。
だから、気軽に意見を聞くつもりで通ってみてはいかがでしょう?
佐江照さんの場合、会社にも専門のカウンセラーが常備し、「パワハラ相談室」なるものがあります。
しかし、どういうわけか、その会社ではそこで相談したり診てもらったら、
「あの人は今、あの上司からパワハラを受けてるらしいよ」
「あの人、ちょっと心、病んでいるらしい」
そういう噂が広まってしまうそうです。
つまり、全く秘密が守られていないのです。
カウンセラーが「守秘義務」を守っていないのか?それとも、本人がカウンセラー以外の社員に話してしまったことが広まったのか?
佐江照さんに教えてくれた人にも詳しいことはわからないらしいのですが、いずれにしろ、佐江照さんは、
「社内の専門医には相談できない」
と、言います。
なんのためのパワハラ相談室なんだ!?
と、憤っても、これが現実で、その対策を講じることもしないのが会社組織です。
「パワハラを訴える人間は、会社に不利益を与える人物」
こういう根強い差別意識がまだまだ残っている証拠です。
だから、やはりここでも外に目を向けるのです。
「心療内科に一度観てもらおうかと思っているんですけど?」
「それもいいですね」
「大丈夫でしょうか?」
「何が不安ですか?」
「心療内科といってもたくさんあるし、どんな薬を処方されるかわからないし」
「そうですね。だったら駅近くとか、比較的入りやすそうなところを選んではどうですか?心療内科といっても、今の悩みを打ち明けるような、心に溜まったものを全部聞いてもらうという感覚でいいと思いますよ。薬は処方されると思いますが、飲む飲まないは佐江照さんの判断でいいと思います」
「でも、医者から病気だと言われてしまったら、もっと落ち込むんじゃないかって。結果、言いなりになってしまうんじゃないかって。そういうことを考えると怖くて行けないんです」
「診断書を書いていただくために受診される方もいますよ。何かあった時のための保証のようなものです。例えば、やっぱりパワハラに耐えられず会社を辞めるときに証拠として残しておくんです。心の健康診断書のようなものです」
佐江照さんは心療内科に行きました。今までパワハラを受けた時に書き留めてあった記録を全て持って。
医者がくだした診断は、「適応障害」でした。
ある一定の環境になるとパニックを起こしたり、気分が落ち込んだりしてその場に適応できなくなるという障害です。佐江照さんの場合の「ある環境」とは、「根田見さんと氷上さんと一緒にいる環境」ということになります。
医者「佐江照さんが、根田見さん、氷上さんへの対応に慣れるということはないでしょう。そもそも二人のパワハラに慣れる必要はありません。そこで頑張る必要もないし、我慢する必要もありません。一番良いのは会社を辞めることですが、それができないのであれば会社にきちんと事情を話して部署替えをしてもらうことでしょう。またそれも難しいのであれば、薬を飲んで、治療を続けながら会社に通う。それでしばらくは様子を見るということです」
予想通りというか、医者の言うことは、「まあ、そうだろうな〜」という程度のことでした。診断を受けて劇的な変化が訪れるわけでもありませんが、
「相手が医者なので、自分の現状や思っていることを全て洗いざらい話せたのはよかったと思います。スッキリしました。行ってよかったです」
翌日、
彼女は、心療内科に受診したこと、そのような診断を受けたことを会社で一番信頼できる女性上司に思い切って相談しました。そして、
「パワハラ相談室で相談してみるべきか?」
「部署替えを願うべきか?」
と、聞いたのです。女性上司は、
「パワハラ相談室には行かないほうがいい。どういうわけか、すぐにバレるし、結果、上司からもっとひどいパワハラを受けることになるし、最終的に辞めていった人がほとんどだから。部署替えも同じような結果になりかねないし。わたしの方から会社にはそれとなく伝えておくけれど、今はとにかくなるべく氷上さんや根田見さんとは接触しないようにして。それで何か言われたらすぐにわたしに報告して」
やはり、何かしてくれるわけでもありません。
でも、
「わたしは適応障害なんだと思ったら少しだけ気が楽になりました。また、おかしいのはわたしではなくて会社のシステムや会社やあの二人だと言われて、やっぱりって思ったし。今は処方していただいた薬を飲むつもりはありません。通院もしません。病院に依存はしたくないですから。でも、最悪、また受診すればいいやって思えたし。女性上司の反応も予想通りでしたが、彼女に言われた通りに、なんとか二人を受け流して、なるべく接触しないようにやっていこうと思います」
彼女のこの言葉にわたしの感じたことは、
気持ちのリセットはできたんじゃないかな?
でした。
パワハラは録音する。メモを取る。
そして、今、彼女は、
録音する。メモを取る。
この二つを徹底的に実践しています。
ICレコーダーを常に持ち歩き、いつでも録音ボタンを押せるようにしているのです。そして、根田見さんや氷上さんが近づき、明らかにパワハラだと思われる威圧的な言動や行動が始まった時にはその状況をしっかりメモに残すようにしています。
今のところ、そのデータを何かに使ったり、人に聞かせたりということは一度もありませんが、
「証拠を残す」
この意識がどこかにあるだけで、パワハラの状況下に置かれても、前よりは冷静でいられるようになったと言います。
「最初は、こんなこと、いけないことなんじゃないかって抵抗がありました。でも、風さんが、『できなければやる必要なんてありません。自分の身を守るための方法の一つとして、こういう方法もあります』とおっしゃってくださったので、ちょっといたずら心でやってみました。それがよかったのだと思います。スリルがあって、ちょっとだけゲーム感覚もあったりして。意地悪をされても、前ほどパニクらないようになりました。録音されているので、少なくとも自分は冷静でいようって思えるようになれました。多分、まだ冷静ではないと思いますけど。辞めるときにはこれらのデータをばーんと叩きつけて辞めるつもりです」
メモには、証拠として残すという以外に、もう一つ、いいことがあります。
それは、
後になって読み返してみるのです。
ひと月前の出来事を読み返し、その時のパワハラの内容、それについてあなたが何を感じ、何に苦しんだか?
そして、それを読んでいる今の自分は何を感じ、思っているか?
「ひと月前のわたしはこんなことで苦しんでいたのか?今だったらこれくらい大丈夫な気がする」
案外、こんな感じになっていると思いますよ。
だって、人は、一度経験したことには必ず耐性ができているものです。そして、強くなっている。
それが人です。
ちなみに、上司との会話を無断で録音することに違法性は全くありません。
もちろん、これをパワハラ、セクハラとは全く関係ないところで公表すればプライバシーの侵害になりますが、パワハラ、セクハラの証拠集めとして録音し、使用することにはなんら問題はないのです。
パワハラは個人の問題ではない!
パワハラは個人の問題ではありません!
会社の問題です。
社会の問題です。
会社は、個人間の問題でことを収めようとするでしょう。
でも、パワハラは会社の膿なのだから、外に絞り出さなければいけません。
でも、絞り出すからには芯までしっかり潰していく。そういう覚悟も必要になります。
だからと言って、パワハラで弱り切った心にさらなる鞭を振るうことが正しいことだとも思えません。
だから、難しいのです。
パワハラ、セクハラ被害者はレイプ被害者と同じです。
被害者であるにもかかわらず、訴え出れば社会から冷たい視線を浴びることになる。
無茶苦茶な世の中ですが、これが現状なのです。
だから、人の助けを借りてください。
たくさんの人に自分の苦しみを話して、その人なりの意見を参考にしてください。
たくさんの人の意見を聞けば、そのどれかに、あなたにあった解決法が見つかるかもしれません。
あなたがパワハラを受けた時点で、それはあなた一人で解決できる問題はありません。
なぜなら、
パワハラは、あなた個人の問題ではないからです。
この社会全体が一緒に背負い、考え、変えていく問題だからです。
パワハラされたら利用できるものはなんでも利用する
最後にわたしの話。
会社員時代、パワハラを受けていたわたしのことを少し。
パワハラの相手は3歳年上の先輩でした。わたしが彼からパワハラを受けていることは誰もが知っていました。でも、誰も助けてはくれませんでした。
ある日、それは会社全体での飲み会の日、一人の先輩がそのパワハラの相手に、
「風にこれ以上強く当たるのはやめろよ」
と、言ってくれました。その瞬間、わたしのタガが外れました。もうパワハラをされなくて済むんだ・・・・。そう思って力が抜けました。
それでも飲み会の帰り際、そのパワハラ相手が、
「おい、風、次の店に行くぞ。逃げるなよ」
そう言いながら肩を掴んできた瞬間、反動的に殴っていました。そしてそのまま馬乗りになって泣き叫びながら殴り続けようとしたところ、周りに止められました。
気持ちが緩んだところでの「逃げるなよ」この言葉がわたしを壊しました。
翌日から一切のパワハラがなくなりました。その相手もわたしを無視するようになりました。
会社からのお咎めは一切ありませんでした。その代わり、なんとなく、みんなとの間に超えられない壁ができたような気がしました。
わたしは「我慢」という一線を超えてしまったわけですから。
会社員として、「不適合者」という烙印を押されてしまったわけですから。
その三ヶ月後にはわたしは会社を辞めました。以来、25年間、会社員をやっていません。
わたしは、会社員不適合者です。
そうです!わたしは会社員不適合者です!
声高らかにそう宣言できます。
だって、これは変えられない事実だし、隠したって事実だし、恥じたって事実です。
でも、それがわたしの肩書きの一つだし、ある意味利点だし、
わたしという人間を表しているのだと思っています。
人を殴ってしまったことは許されませんし、恥ずかしいことですが、
やってしまったことを後悔はしてません。
だって、あの時、あれがなかったら、おそらくわたしは壊れていたのですから。
フリーライターになってもパワハラは何度も受けました。
その都度、逃げられるときには逃げました。だって会社員じゃないし。
うまく立ち回れるときには立ち回ります。
戦うべきときには戦います。必ず第三者を交えて。証人は必要ですからね。
でも、できるなら、パワハラクソ野郎とは同じ土俵には立たないようにしています。
同じ土俵に立ったら、「ただの喧嘩」になってしまうからです。
でも、それが社会で人と繋がって生きるということなのだと理解しています。
わたしのような会社員不適合者でも、けっこう幅を利かせて生きることはできるのです。
コツは、自分の身を守るために、
利用できるものはなんでも利用する。
絶対にどこかに自分の場所はあるものです。
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
心の冷えとりコーチングはこちらもご覧くださいませ。
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。