どこの家でも必ず一度は起こる嫁姑問題。自戒を込めてお伝えしますが、嫁姑問題では、一番頼りにならないのは夫です。なぜって、夫は母にも妻にもいい人を見せたいからなのです。そんなことを知っておけば、最初から夫に頼ろうなんて思わない分、楽かもしれませんよ。
嫁姑のファーストインプレッション
知人女性・静子さん(仮名前)の話です。
29歳OL。彼氏と結婚を前提とした同棲を始めたばかり。
先日、初めて彼氏の母親と兄の4人で食事をしたときの話です。
つまり、将来の嫁と姑のファーストインプレッション。
彼は関西出身で、母子家庭で、今年60歳を過ぎる母親の女手一つで二つ離れた兄とともに育てられました。母親は現在でもバリバリ仕事をしているキャリアウーマンです。母親の性格は、「竹を割ったようなはっきりとした性格で、さっぱりしている」と、彼の談。
静子さんとの結婚について話をしたときも、
「お母さんから特にこうしてほしいなんてなにもないから。あなたたちの好きなように決めなさい」
そう言う母親だから、なにも心配することはないと、彼は静子さんに話していました。
そして、彼が静子さんを自分の家族に紹介するという食事会。
静子さんを囲むような形で隣に彼氏、正面に母親、その横に独身の兄が座るという状況でした。
お互いの自己紹介を終え、近況を話し、つつがなく穏やかに進んでいきました。母親は関西の人だけあって、よくしゃべるし、時折、冗談を挟み、親子の会話が漫才とまでは言わなくても、リズミカルで心地よい響きに感じるほど静子さんは、リラックスできたそうです。
最初は緊張していましたが、気がつくとたくさん笑い、かなり打ち解けました。油断とまではいかないまでも、第一印象はかなり好印象。
静子さんが一番心配したのは、母子家庭にありがちな、母親と息子たちの強すぎる絆に自分が入っていけないのではないかという不安でした。
しかし、母親は外見上はとてもドライで、
「わたしはわたしの生活。あなたにはあなたの生活があるんだから、わたしは大阪で頑張るからあんたは東京でしっかりやりなさい」
そういう感じだったので、静子さんも、(こういうお母さんだったらやりやすいかも…)。そう感じていました。
つまり、ファーストインプレッションは、好印象!
そんな、和やかな会も終盤に差し掛かったころ、お母さんは、ぽつりとこんなことを言いました。
「でも、あんたが結婚って、いままで考えたことなかったけど、こうやって静子さんに会うと、なんか、わたし歳とったんやな〜って気付かされたわ。急に老け込んだような気分になった」
「そんなことないです。お母さんとってもお若いです。わたしなんかより元気みたい」
「そんなことないよ。いつポックリいくやら。静子さん。がんばって、はよ、子供つくってね。孫、はよ見たいわ〜。わたし、女の子のこと、ようわからんから、やっぱり男の子がいいわ〜」
何気ない感じで、話の流れそのままにという感じで出てきた母親の言葉は、静子さんにとっては、思いがけない方向から突然視界に入ってくるようなキラーパスでした。
よほど無神経でない限り、今時、そんなことを聞いてくる人はいません。いませんが、たまにいることはいる。だから、言葉としては、どこかで聞いたことがあるようなフレーズ。
だから、何気なさすぎて、一瞬フリーズ。そして、何気なさとは程遠い、話の中身にものすごい違和感。ぞぞぞぞ〜っと背中を虫が這うような悪寒。
静子さんは言葉が出てきません。助けを求めるようなぎこちなかったであろう笑みを浮かべて隣の彼氏を見ました。
彼は、胸ポケットからスマホを取り出し、操作し始めました。
(えっ?なんで聞こえないふり?)
そのまま斜め前に座る彼の兄に目を向けると、なぜか明後日の方向を向いています。兄もなぜか無視を決め込んでいる。
(えっ?なんで?)
その瞬間、ちょっとしたパニックを起こした静子さんは、母親の顔を見ることができず、そのまま下を向いてしまい、
(やばい…どうしよう。なんか言わなきゃ…。かえってお母さんに変に思われちゃう…)
そう思うと、顔や耳のあたりがどんどん紅潮してきて、自分でもこの感情がなんなのか、よくわからない状態にハマっていきました。
結局、静子さんは顔を上げられず、彼と兄は無視を決め込んだまま。母親は、もうその話題には触れず、黙って食事に手を伸ばしたそうです。
そこから散会まで、みんながどういう会話をして、自分がどういう態度をとって、母親がどのような表情をしていたのか、よく覚えてないそうです。
嫁姑問題は夫婦の関係も微妙にしてしまう
静子さんは、彼の言葉を待っていました。
「おふくろがあんなこと言ったけどさ〜。気にすんなよ」
「なにが?」
「ほら、子供がどうのこうの。男の子が欲しいとか、そういうこと」
「ああ、あれね。別に気にしてないよ。突然、そんな話になったからなんて返していいかわからなくて」
「そうなんだよ。俺もビックリしてさ。唐突すぎるんだよな〜。気を悪くするなよ」
「お母さんの気持ちになったらそうだよね。そこが一番気になるんだもんね。でも、聞き辛かったんだろうな。だから、あんな変な間になっちゃったんだよね。でも、お母さんには申し訳ないけど、わたしは女の子が欲しいんだけどね〜」
「おれも。(^◇^)」
「だよね〜」
「ハハハハ〜」
………。
帰りの電車で、当然、そんな会話になると思っていました。しかし、電車内でも、家に帰り着いても、彼は、ついさっきまで母親と一緒にいたことが嘘であるかのように、まったくその話題には触れてくれませんでした。
子供の話云々以前に、静子さんに母親の印象はどうだったか聞いてこないし、ついさっき顔合わせをしたばかりだというのに、彼は、まったく違う話題を振るのです。どう贔屓目に見ても不自然。その話題に触れたくなくても、触れないことはものすご〜く不自然。明らかに避けている。
と、いうことに静子さんは気がついて、気がつくと同時に、ものすごい不安が押し寄せてきました。
(もしかして、悪いのはわたしなの?)
と、いう不安。つまり、
(今日の食事会は、カレ的には失敗?)
そういう想いに囚われたとたん、静子さんは、彼になにも聞けなくなってしまいました。
そして、
(お母さんはなぜ、あのタイミングであんなことを聞いたのだろうか?)
(彼は、わたしのことをお母さんにどのように紹介していたのだろか?)
(お母さんは、ずっとわたしのことを値踏みするように観察していたのだろうか?)
(子供のことを聞かれてなにも言えなかったわたしのことをダメな女と思っただろうか?)
次々と、ネガティブな疑問が頭に浮かんできます。
そして、その疑問から導き出される答えはすべて、
(わたしを見てガッカリしただろうな…)
(わたしの態度に幻滅しただろうな…)
(息子の嫁にふさわしくないと思っただろうな…)
(最初から受け入れてくれるはずなんてないのに、わたしの考えが甘かった…)
相手と自分の関係を否定するような言葉ばかりでした。
そこから、導き出された結論は、
会わなきゃよかった。
そして、
あのお母さんとの同居は無理かも…。
です。
嫁姑問題は、長い歴史が証明している
「嫁姑」
と、いう言葉がこの世に存在している限り、嫁は姑を意識し、姑は嫁を意識する。全然、良い意味ではなく、最初から否定的に。
つまり、始まる前から二人の関係はゼロではなく、マイナスから始まるのです。
嫁になる女性が姑になる女性を意識するのは当たり前のことです。初対面で緊張するのは当たり前。
世の中の嫁となる女性は、ほぼ全員、間違いなく、
母親と息子の関係をまずは疑っている。
マザコン
かどうか。
大抵の男は、マザコンを否定します。でも、女性は信じない。
「うん。おれ、マザコンだよ」
仮に真実を話しても、女性はやっぱり信じない。実際に会って、二人の関係を観察して、自分の目で自分の心で判定を下すまで。
「彼のいう通り、普通のマザコンなのか?それとも、想像以上に酷いやつなのか?」
だからといって、結婚しないという選択肢にはならないから、厄介なのです。
「あ、こいつやっぱりマザコンだ」
そう確信を持ってしまったら、大抵、結論は、
「彼をそういうふうにした母親のせいだ。ムキ〜ッ!」
そうなります。
まあ、母親にとって息子は恋人ですからね。いつかは自分を必ず捨てる恋人。自分を捨てたのは息子なのに、
「あの嫁のせいだ!あの嫁がなんか変な入れ知恵してんだ。ムキ〜ッ!」
こればかりは、
「今の時代は、昔ほどそういうことなくなったよ」
そう言われても、まったく信じられない。
だって、私の周りでは、ムキムキ言っている人ばかりですよ。私の周りばかりたまたまそういう人が集まっちゃったなんてこと、あるわけないですしね。
だから、まあ、「嫁姑問題はある」
ない世界は、宇宙のどっかに人類以外の生物がいるかもしれないレベルとほぼ同じと考えたほうがよいでしょうね。
地球上のどっかでは、嫁姑問題はないのかもしれませんが、少なくとも、日本では、脈々と、まるで文化のように受け継がれています。
嫁姑の関係は会社の面接と同じか、もしくはそれ以上。
会社の面接が落とすための面接であるように、姑の嫁に対する面接も落とすためのもの。なのに、相手は、かわいい息子が選んだ女性です。
「はあ〜?こんな女なの?」
そう思っても、落としたくても落とせない。そんなこと息子に言えない。だから、せめて少しでも、かわいらしいところ、いい子ね〜っと言えるようなところを探して、息子のためにもなんとか納得したい。最初から嫌な印象を持ちたくないし、持たれたくない。
だからといって、嘘はつきたくない。
そんな複雑怪奇な心理状態に、おそらく姑だっておかれている。
そういう意味では、
お互いがまったくフェアな状態で顔を合わすのは、ここだけ。この初対面というシチュエーションなのでしょう。
だから、
お互いが普段通り、リラックスした状態で会うなんてことは、絶対にない。
だから、
ほんのちょっとしたきっかけにもならないようなことが、きっかけとなって、
ミスコミュニケーションが起きてしまうのです。
そう、絶対に、起きてしまうのが、この、
ミスコミュニケーションです。
嫁姑問題では決まって最も頼りにならないのが、息子であり、夫
静子さんは、たったあれだけの空気が流れただけで、彼のお母さんのことを、(苦手だな〜)とは、思いたくないのです。たったあれだけの間で、(いっしょに暮らすのは無理だな〜)なんて、本当は思いたくない。
だから、彼の一言が欲しかった。
「あんなの、全然気にしなくていいよ。おふくろはいつもあんなんだから。おふくろも、もう忘れてるよ。静子のこと、気にいってたと思うよ」
嘘でも、いいからそう言ってほしかった。
でも、何も言ってくれなかった。
(てことは、やっぱり、お母さん、わたしに良くない印象を抱いたんだわ。確信!!)
そう思ってしまいますよね。
母親からしてみても、そうです。
「孫がほしい」
それは、本音です。
ぶっちゃけなんです。
(本当はこういうこと言っちゃいけないかな?若い女の人はこういうこと言われると引くかな?)
そういうことくらい、考えてますよ。
自ら子供を産んで、育ててきた経験があります。妊娠する苦労も産む苦労も、育てる苦労もすべて知り尽くしている。そういう意味では、お嫁さんの敵であるはずがない。でも、「言っちゃった」んです。
言っちゃいけないことはわかっていても、言っちゃったんです。思わず口を滑らせただけかもしれない。一旦、口をついて出てくると言葉は最後まで止まらないものです。(やばい)と、思ったのかもしれない。
「変なこと言ってごめんなさいね。今の言葉、忘れて」
と、すぐに訂正したかったのかもしれない。その焦りが今度は自らを黙らせるという間違った指令となったのかもしれない。
歳をとるということは悲しいことです。
言っちゃいけないことを言ってしまうし、言わなきゃいけないことを言わせてくれない。どうしても判断が鈍るのです。
そこで、始まってしまったほんの小さなほころびが、後々大きな傷となって現れるのです。
悲しいかな、そういうことがやたら多い嫁姑問題。
でも、そこで、息子であり、夫は、まったく頼りになりません。
なぜなら、
よくわからないから。
で、正直、どっちに味方をすればいいのか、
よくわからないから。
「なんでわからないの?おかしいんじゃないの!?」
わたしも若い頃、よく奥さんにそう言ってキレられました。
こっちは、奥さんの味方をしているつもりで話をしているのに、突然、
「ああ、やっぱりお義母さんを庇うのね」
そう言われたり、母親の言い分を黙って聞いているだけなのに、母親から、
「あなた、いつからあっちの肩を持つようになった?」
そう言われて、
「ええっ!?なんでそうなるの?」
そう叫んだことが、幾度あったことやら。だから、ホント、
よくわからないのです!!
そう言い続けて、早27年。
気がつくと、な〜んにも解決してないんですよね〜。
こればっかりはね〜。
ホント、厄介なんだよな〜。
正直、この分野には、触れたくなかったんですよ。
でも、触れずに天寿を全うできるほど、人生は甘くない。
わたしの両親もかなり高齢。
このままでよいはずないし。
よし、ここらでちょっと、気合を入れて、過去の歴史を振り返り、検証してみるか…。
気が重いけど。
まあ、そんな感じで、「嫁姑問題」のはじまり、はじまり…。
(執筆:心の冷えとりコーチ・風宏)
続きはこちらをご覧くださいませ。
風宏の心の冷えとりコーチングはこちらをご覧くださいませ。
風 宏(Kaze Hiroshi)
心の冷えとりコーチ
冷えとり歴13年目。靴下6枚ばき、半身浴20分。最近お酒がやめられるように変化した2015年2月4日より、女性のための問題を解決するブログを開始。2016年9月GCS認定プロフェショナルコーチ資格取得。女性のための心の冷えとりコーチング講座も開催。