私たち冷えとり夫婦は、4回交通事故に遭っています。交通事故は、自分が気をつけていても、巻き込まれることもあります。
4度目の事故では、二重事故に巻き込まれ、むち打ちや半月板損傷などの症状が出ました。交通事故は、自動車保険で対応される場合がほとんどですが、当然ながら、保険会社はできるだけ保険金額を少なくしようとします。
私は、弁護士特約の自動車保険に入っていたため、交通事故の専門家にいろいろ教わり、交通事故紛争処理センターというところがあるということを知りました。そして、紛争処理センターにいる弁護士と保険会社とやりとりすることになりました。
この記事は、
- 交通事故の後遺症に備えておきたい
- 保険会社の言いなりになりたくない
- 治療費を心配しないで、治療に専念したい
という方に向けて、自分の経験をお伝えするものです。
最初の病院の交通事故診断が保険基準の全て
相手の保険会社の勧めで、大きな大学病院へ検査に行き、もう一つ別のスポーツ医療専門の整形外科医院に行きました。どちらも、半月板損傷治療では有名な病院でした。
事故原因については、どちらの病院も、
「事故から時間が経過していますので、最初の病院が診断を下した結果を覆す(くつがえす)診断はできない」
と、いうことでした。
「でも、本当のところ、どうですか?オフレコでもいいんです。先生は、事故が損傷の原因である可能性はあると思いますか?」
そう食い下がっても、
「最初の医師の診断を覆すというのは、診断そのものが間違っているとか、そういうことがないかぎり無理なんですよ。最初の診断がそうだったのなら、そうとしか言えないんです」
事故に関しては、
事故直後の病院の診断が全てなのです。
ただ、手術に関しては、どちらの病院も、
「しないことをお勧めします」
最初の病院とはまったく逆の判断でした。その理由は、
「半月板は、靭帯とは違って再生手術ができないので、除去するしかありません。手術して数年は痛みが取れますが、10年くらいすると痛みが出始めるケースが多く、そうなると、クッションがないので一生痛みがとれない可能性が出てきます。だから、今は、運動をして膝の周りに筋肉をつけて、膝の関節そのものを強化する。その過程で痛みが出てきたときはヒアルロン酸などの痛み止めを打つ対処療法が主流なのです」
と、いうことでした。
治療方法に関しては、やはり、わたしが脳腫瘍を患った時と同じ、
セカンドオピニオン、サードオピニオンです。
最終的には、保険のことで交通事故紛争処理センターへ
最終的に、わたしも奥さんも、行政書士さん勧めで、
交通事故紛争処理センター
の、判断を仰ぐことになりました。
ここは、交通事故専門の弁護士さんがいて、示談や裁判になる前に、被害者、加害者双方の言い分を聞いて、保険料、慰謝料の額を決めて、迅速に、
「これで、示談にされてはいかがですか?」
と、あっ旋してくれる施設です。公益財団法人なので、費用は一切かかりません。
ここでの話し合いで、示談にできなかった場合は、裁判で争うということになります。
必要書類を提出し(行政書士さんがすべてつくってくれます)、2〜5回の聞き取り調査を双方から行って、担当弁護士さんが、補償額を決めるのです。
さきに示談となった奥さん曰く、
「聞かれたことにただ答えるだけで一回1時間」
と、いうことで、ストレスを感じたり、きついことを言われるなんてことはまったくなかったと言います。
奥さんは、2回の聞き取りで終了。
行政書士さんの算定した額のほぼ全額が支払われることになりました。
一方のわたしは、それから1年後でした。
処理センターの前に、
半月板損傷が、事故原因であるか否かの判断を裁判所に仰がなければならなかったのです。
そのために治療を続け、ある程度の回復を見て、それらのデータをもとに書類を作成し、裁判所に提出する。裁判所からの結果が出るまでの行程に10ヶ月かかりました。
結果は、
「半月板損傷は、事故原因である可能性がないとは言い切れない」
と、いう良い結果になったのですが、
「膝の稼働範囲が、障害者認定を受けられる基準に達していない」
と、いうことで、半月板損傷の治療費は支払ってもらえますが、わたしの半月板損傷が障害者認定をもらうほど重度ではないという判断で、半月板損傷に関しての慰謝料は請求できないということになりました。
いずれにしても、
「半月板損傷が事故原因である」
ことは、半分は認めてもらえたということです。
その裁判所の書類を持って、交通事故処理センターに予約を取り、担当弁護士の聞き取り調査が始まります。
わたしも2回の聞き取りで終了しました。
最終的には、行政書士さんが算定した補償額よりは大幅に減りましたが、やっとすべて終わったという安堵感の方が大きかったように思います。
ただ、こういうことがありました。
最後、弁護士さんが、わたしと相手の保険会社の担当者双方を呼んで、目の前で金額を提示して、お互いにサインをして示談するのですが、これは、そのときの3人の会話です。
弁護士「金額なんですけど、わたしが最終的に提示した金額より、額が少々多めになっています。これは、保険会社からの提案で増やした金額ですので、ご了承ください。こういうこと普通ないんですけどね。もちろん了承しますよね。金額増えているんだから(笑)」
風「え?そうなんですか?」
保険会社「風さんとは、2年半の付き合いです。こういう言い方が適切かどうかわかりませんが、風さんには大変お世話になりました。わたしどもで調べなければならないことを調べていただいたり、主張されていることが、すべて明白でまったく嘘がないということもよくわかりました。風さんのように、正直に本当のことを話してくださる方は少ないんです。少しでも慰謝料を多く払ってもらいたいと思われる気持ちはわかるんですが、やっぱり、調べているうちに嘘はなんとなくわかるものなんです。だから、争うと長くなってしまうのですが…。こういう仕事をしていて、被害者の方とここまで協力して腹を割って話せるなんてことは普通ありません。半月板損傷が裁判所に認められなかったのは風さんにとっては残念な結果でしたが、金額に少しだけわたしの気持ちを加味させていただきました。本当に、申し訳ありませんでした」
弁護士「保険会社が紛争処理センターが出した金額より多く払うように提案してくるなんて、わたしも初めてですよ」
風「だったら、こちらの希望を全額認めてくださいよ!(笑)」
保険会社「それはさすがに会社が認めてくれません(笑)」
保険会社は、交通事故保障は最低限の金額しか提示しない。
保険会社が最初に提示してきた金額は、はっ?と、あきれ返るほど、低い金額でした。
ほんとうに、びっくりするほどにです。
でも、今までわたしが話してきたような現実を知らない被害者は、
「ああ、こんなもんなのね…。もらえるだけいいか…」
そう思いこんでしまい、保険会社との話でも、
被害者「これ以上は無理なんですか?」
保険会社「そうですね〜。これが、一応、算出した慰謝料額になりますので」
被「はい。わかりました」
保「では、示談ということで」
被「はい。お願いします」
これで、全て終わりになります。
では、わたしの場合は、どうだったか?
保険会社の算定した金額の2倍で示談となりました。プラス、担当者のお心づけ金額まで上乗せしていただけたのです。
なぜ、保険会社の担当者は、上乗せまでしてくれたのか?
わたしには知識などありませんでした。
では、なぜか?
交通事故の専門家に依頼したからです。
交通事故の保険の休業損害額とは?
保険会社が最初に示した損害賠償額の内訳には、
治療費と慰謝料の額を足した額(実際、支払われるはそこから治療費を引いた額。つまりは、慰謝料の額のみ)しかありませんでした。
休業損害額が入っていなかったのです。
それは、奥さんも同じでした。
休業損害額とは、怪我をして通院、治療するにあたって、仕事の業務に支障が出ます。給料を日給に換算して、そのうちの何パーセントが損害額になるのかを計算して(わたしの場合30パーセント〜50パーセント)、通院日数に掛けるのです。その合計額が、休業損害額となるのですが、その額が、まったく入っていなかったのです。
保険会社が、計算するのを忘れたわけではもちろんありません。
保険会社が、わたしたちを騙そうとしたわけでもありません。
休業損害額は、慰謝料ではないので、こちらから休業損害額を請求しないと、保険会社が支払う義務はないのです。
だから、最初に提示された額で、示談をしてしまうと、あとから請求しても遅い。
でも、そんなこと、素人にはわかりません。
わたしは、資料が自宅に届いてすぐに保険会社に電話をしました。
「この資料の損害賠償額には、休業損害額が入っていません」
「あ、そうですよね。ご請求、されますよね?」
「そうですね」
「はい。わかりました。ご請求されるということで」
この会話があって、初めて、休業損害額も払ってもらえるということになるのです。
交通事故後に保険会社と戦うときこそ冷静に
保険会社は、事故当事者に余計なことは、話しません。
とにかく、迅速に、最低限の慰謝料で示談をする。これが、保険会社の目標ですから。
知人の弁護士さんが、こんなことを仰っていました。
「人間は、どんな人間でも悲しいかな、現金にめっぽう弱い。現金を目の前にすると、簡単に引き下がるんですよ。それくらい、お金の力は強いんです」
この弁護士さんが被告側の弁護を担当したある民事裁判で、原告が損害賠償額500万円を請求していたケース。裁判が長引き、2年近くかかっていました。被告側が示談を提示して、何回か話し合いがもたれました。お互いの主張する金額に大きな開きがあったため、話がまとまりません。何回か話し合いが行われているとき、被告側の弁護士さんは原告側が示談を急いでいると判断しました。そして、5回か6回目の話し合いのとき、「敗訴を認める代わりに、これで示談にしてほしい」と、現金15万円を机に広げて置きました。すると、原告側は示談に応じたのです。
こういうことは、なにも珍しいケースではないそうです。
それくらい、現金の力は強い。魔力といってもいいほどです。
知識のない交通事故被害者が、保険会社から金額を初めて提示されたら、
「ああ〜、こんなものか…」
と、思っても、その金額=現金
ですから、「すぐに示談したい」
そして、「もとの生活に戻りたい」
保険会社は、その性質を利用して、人間の意識を巧みにコントロールしているのです。
プロ集団に、たった一人の被害者が勝てるはずありません。
だから、プロにお願いするのです。
プロにお願いすると、心に余裕が生まれます。
その余裕は、本当に大きな大きな余裕なのです。素人一人で戦うのとでは、雲泥の差です。
だから、わたしは、行政書士さんのアドバイスによって、常に冷静に落ち着いた気持ちで、医師や保険会社と話し合いができたのです。
保険会社から、話のわかる気持ちのよい人物と判断されたから、慰謝料額を増やしてもらえたのです。
余談ですが、
交通事故紛争処理センターを、わたしは、保険会社の担当者と一緒に出ました。
風「駅ですか?」
保険会社「はい。駅まで歩きます」
風「僕も駅まで歩きます。でも、二人でこのまま駅まで並んで歩くなんて、変は変ですよね」
保「そうですよね(笑)」
風「本当にあの額で大丈夫なんですか?」
保「変な話なんですが、保険会社の担当者も人間なんです。計算がすべてじゃないんですよ。感情に左右されるんです。わたしは、この案件は本当に気持ち良く仕事をさせていただきました」
風「そうですか。そう仰っていただけると僕も気持ちいいです」
保「じゃあ、風さん、さきに行ってください。わたしは、ちょっと遅れて行きますので」
風「そうですね。じゃあ、もうお会いすることはないと思いますが、いろいろとお世話になりました」
保「こちらこそ。お互い、二度と会わないことを願って。では、失礼します」
ビルの外での会話は、まるで、ドラマのワンシーンのようだなって、思いました。
男性のわたしですら、
事故に遭うと、これだけの苦痛を強いられるのです。
わたしは、職業柄、経験上、交通事故に遭った時の法的な対処法を熟知しています。それでも、過度のストレス、言いがかり、度重なる話し合いで身も心もボロボロになっていくのです。
これが、女性となると、被害者になった場合はもちろんのことですが、加害者になった場合でも、本来、法的な範囲内で行う補償以上のことを強いられることが少なくありません。
それは、事故直後の動揺につけこんで、
法外な要求をしてくる相手がいる。
と、いうことなのです。
それでは、次回から事故の事例を見て行きましょう。
つづきはこちらへどうぞ!
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)