私たち夫婦は実に4回も交通事故に遭いました。
事故は遭ってしまったら、損することがほとんどです。特に、もらい事故ほど、つまらないものはありません。
4回の交通事故体験の中にもちろん貰い事故体験もありました。事故は体も怪我したりしますが、心にも大きなダメージを受けますので、本当に大変です。
そんなとき、少しでも助けになるお金を得られることができたら....
治療も安心して受けることもできますし、心をケアすることもできますよね!
この記事は、もしものためのときにこんなことをすると良かったという私たち夫婦の交通事故体験から学んだことをお伝えします。
交通事故現場の救急隊員の言葉
事故は、3台の玉突き事故でした。
時速80キロで走行していた大型バイクが、急停車した前の車に追突し、追突したバイクが勢いそのまま路肩に停めていたわたしの車の後部に追突したのです。
わたしたち夫婦の乗った車はその勢いで前に押し出され、すぐ前に停まっていた車にぶつかる直前で止まりました。その車にも、子供の習い事を待つご夫婦が乗っていました。歩道には、習い事を終えた子供たちがたくさんいました。
歩道にはガードレールがなかったので、わたしたちの車にぶつかっていなければ、バイクはそのまま歩道に乗り上げ、多くの子供を巻き込んでいました。
体が前方に強く押し出され、首が前後に激しく揺れた記憶があります。
すぐにお互いの顔を見て安全を確認し、後ろを見ると、ドライバーの姿がありません。わたしはすぐに外に出て後ろに回ると、大型バイクはわたしの車にめり込むような状態で、ドライバーは倒れていました。ヘルメットから覗く両目の眼球から出血し、意識がありません。一目見て、危ない…と、感じました。
周りにいた大人の男性が10名以上集まり、
「救急車救急車!」
と、叫んでいます。突然、意識のなかった男性がパチンと目を開け、
「ウォおおおお〜!」
と、叫びながら暴れ始めたのです。その男性は180センチ以上あって体重も100キロ近くあるような方だったので、わたしも一緒に大人の男全員で起き上がらないように抑えて、
「じっとして!動かないで!いま、救急車くるから!」
と、言うのですが、言葉にならない叫び声を上げて暴れ続けるのです。一人の男性が、「ヘルメットを脱がしたほうがいい」と、言い、大人3人がかりで慎重にヘルメットを脱がせ、わたしは彼が動かないように肩のあたりを抑えていました。足もばたつかせるので、何人かで抑えていました。そのうち、警察が来て救急車が到着しました。その方が救急車に乗せられ、呆然としていたら、いつのまにか、周辺にはものすごい人だかりができて、その中に娘がいました。奥さんも娘と立っていました。そこで、初めて、
「大丈夫?」
と、奥さんに声をかけたのです。お互いに、
「大丈夫大丈夫」
と、声を掛け合い、ペシャンコになった愛車を呆然と見つめていたら、
「あなたが運転手?」
と、救急隊員が声をかけてきました。
「乗っていたのは、あなただけ?」
「いえ、妻も」
「じゃあ、二人とも救急車に乗って」
「あ、僕たちは大丈夫です」
「いや、いまは興奮しているから痛いところないかもしれないけど、これだけ車つぶれてるんだから首とか腰とか痛めている可能性高いんで、乗りましょう。後から痛みが出てもよくないのでね。検査だけはしておきましょう」
あとで思うと、この救急隊員さんの言葉のおかげでした。
わたしは、知識では、
事故の被害者になったら、怪我をしてないと思っても、必ず、救急車を呼んでもらって検査をする。
と、いうことをわかっているつもりでした。でも、そんなことはすっかり吹っ飛んで、救急車に運ばれた加害者とペシャンコになったわたしの車のこと、そして、不安な顔をしている娘を心配させたくない一心で、救急車に乗ることを拒否していたのです。それは、奥さんも同じでした。
人間、動揺すると、考えて行動しているようでも、全然、検討違いのことを言ったり、行動したりしているのです。
交通事故の貰い事故はただのやられ損
わたしたちは、救急車に乗りました。隊員さんは、
「ぶつかってきた大型バイクは最低でも80キロ以上は出ていたと思います。それが、ノーブレーキで追突してきて、あれだけ車の後部が押しつぶされているんだから、体は相当なダメージを受けていると思いますよ。どうですか?」
そう言われても、わたしも奥さんもまったく痛みを感じません。
そうなのです。この時は、痛みを感じることができなかったのです。
(あの車どうなるんだろうな〜。明日仕事いけるかな〜)
そんなことをボ〜ッと考えていました。
病院について、担当医から、
「どこが痛い?」
と、聞かれました。
「いまはどこも痛くないんですよね。興奮しているのか、よくわからなくて」
「そう、じゃあ、首と腰だけ撮っとこうか」
レントゲンを撮り終わり、写真をすぐに診ました。担当医は、
「どこも折れたりしてないね。じゃあ、湿布と飲み薬は、いる?」
「はい。いちおう。で、このあと、どうすればいいですか?」
「そうだね〜。明後日あたり、おそらく首や腰は痛いだろうから、そのあたりで一回来てください」
それだけでした。奥さんも同じようなものでした。ただ、奥さんの担当医は、
「痛くなくても、レントゲンに写らないところで突然痛みが来たりするので、できれば毎日通って、今日検査できなかったところを検査してください。あとになって、痛いって言い出しても、保険がおりないかもしれませんから。完全に大丈夫ってなるまで、しっかり通院してくださいね」
そう仰ったそうです。
この時点で、わたしと奥さんの担当医の温度差が全然違いました。
我々は、その足で、警察署へ行き、今度は事情聴取を受けることになりました。そこで、追突してきた大型バイクの男性が、重体に陥っていることを聞かされ、ものすごく怖い気持ちになり、なんとか助かってほしいと、懇願するような想いを抱いたことを今でも覚えています。
一通りの事情聴取を終えたところで、警察の方にこう言われました。
「今回、風さんにとっての加害者は二人です。最初に車を急停車した車の後方不注意で今回の事故が起きてしまったので、一番悪いのは、この運転手さん。次が、風さんの車に直接ぶつかったバイクの運転手さん。車や治療の費用、慰謝料はこの二人に請求できますが、できれば、直接ぶつかった運転手さんに請求するのは止めたほうがいいね。もしものことがあったら、逆恨みなんてことになりかねないから」
「もしものことっていうのは、亡くなった場合ですか?そういう場合があるんですか?」
「そうですね。今回、風さんはエンジンを切って止まっていたから、何の落ち度もないんだけど、もし、ぶつかった方が亡くなったり障害が残ったりしたら、『風さんの車が止まっていたから』なんてことで裁判を起こされるようなこともないことはないのでね。案外、少なくないんですよ。家族の方が起こす場合がね…。まあ、保険的には一台でも二台でも変わらないのでね〜。それでいいですか?」
正直、よくわからないので、従うしかありません。
「お見舞いとかは行ったほうが…?」
「あ、そんなことしないほうがいいです。やぶへびですよ。風さんは被害者なんだから。被害者が加害者を見舞うなんて、余計なトラブルのもとになりますから。まあ、警察のほうからも相手のご家族に伝えますけど…。だから、事故の当事者は3人なんだけど、保険の請求は、急停車した車に乗っていた方っていうことでね。まあ、この人もかわいそうなんだけどね…。でも、事故ってこういうことでおきますからね。誰も得しないからね〜。だから、注意は絶対怠ってはならないわけで」
「ただのやられ損ってことですか?」
「事故はね〜。特に、玉突き事故みたいなやつは、被害者と加害者の関係が微妙ですからね〜。被害者であり加害者でもあったりするから。なにがどうなってもやり損だし、やられ損ですよ」
淡々と話すお巡りさんの言葉には、長年、事故現場を見続けた人間にしかわからない説得力があります。後日、重体に陥っている男性の経過がどうなるか、教えていただけるということで警察署を後にします。
(男性は、一命だけは取り止めましたが、頭がい骨陥没骨折、脳挫傷、眼窩底骨折、肋骨骨折、大腿骨骨折、腎臓破裂で、医師の判断では、おそらく社会復帰は難しいだろうということでした。お子さんはいませんでしたが、40代前半でご結婚されていました。建設現場からの仕事帰りでの事故でした。一方、加害者の男性は、乗っていた車は会社の営業車でした。営業中に寄ってみたい飲食店を探しながら走っていて、見つけた瞬間に思わず急停車してしまったということでした。たったこれだけの判断ミスで、彼は二家族の人生を狂わせてしまったのです)
その晩、すぐに、わたしの車の保険会社から電話が入ります。
「今回、風さんは、停車中でしたので、過失割合がゼロです。そうなると、こちら(わたしの保険会社)はまったく動くことができないので、風さんがご自身で向こうの保険会社と交渉をしなければなりません。そうなった時のために、風さんの保険には弁護士特約がついていますので、保険で弁護士さんにお願いができます。実費はかかりません。それと、病院に5回以上通っていただくと、風さんと奥様に30万円ずつ、お見舞金が出ますので、5回以上は通ってください。使える制度は使ってくださいね。あと、奥様は、契約社員ですよね。であれば、専業主婦扱いになるので、その分のお見舞金も出ますので、こちらに請求してください」
保険会社の担当者から出る言葉は、初めて聞くような内容ばかりでした。すべて、保険契約書に書いてあることなのに、普段、どれだけきちんと見ていないか、よくわかります。
と、いうのも、わたしに限らず皆さんそうだと思いますが、保険契約の手続きはすべて車を購入したディーラーさんがお得なプランを選定してくれます。わたしは出された書類にサインして印鑑を押すだけ。
だから、
過失割合は10対0だと、こちらの負担が0になる代わりに、相手との交渉にこちらの保険会社がまったく動いてくれないこと。
弁護士特約を利用すると、弁護士さんにお願いできること。
5日以上、通院すると自分の保険会社から見舞金が出ること。
被害者が専業主婦の場合、自分の保険会社から見舞金が出るということ。
これらのことを、まったく知りませんでした。
しかも、あのとき、救急車に乗っていなければ、こららは、一切、利用できなかったのです。
本当に、救急隊員様様でした。
もらい交通事故の翌朝、奥さんのクビに激痛。
翌朝の日曜日、奥さんは、クビの痛みで起き上がれません。案の定でした。
わたしはというと、クビや腰に筋肉が突っ張ったような張りを感じていましたが、もともと肩こり性なので、事故が原因なのが、ただの緊張なのかまだわかりませんでした。ただ、左ひざを曲げたり伸ばしたりすると、何回かに1回の割合でなにかが引っかかるような違和感を感じていました。
月曜日、奥さんは朝一番で病院へ向かいました。担当医は、一昨日、丁寧に診察してくれた医者ではありません。その新しい担当医は、レントゲンで、どこも異常がなかったということで、露骨に面倒臭いという態度で問診をしただけで、
「ただの筋肉痛でしょう。一週間くらい様子見ないとわからないから、次は一週間後に来てください。無理に来る必要はありませんから」
そう言ったそうです。クビにコルセットを装着したほうがいいのではないか?そう思って、それとなく聞いてみたのですが、担当医師はそういうだけで取り合ってくれません。
しかし、奥さんの痛みはひどくなるばかり。翌日も、痛みはさらに増します。首全体の痛みが、一部、針で刺したような痛みに変わっていました。
翌日、担当医は昨日と同じ。奥さんが、診察室に入るなり、この医者はこう言いました。
「あなたね〜。いくら慰謝料が欲しいからって、毎日来るのは露骨だよ〜。そういう患者ばっかりだから本当に治療しなくちゃいけない人の時間がなくなっちゃうんだよ。あなたは大丈夫だから。骨折れてないから。はい、終わり終わり」
奥さんは、それでも我慢して、病状と仕事の復帰について尋ねました。すると、彼は、
「そういうのは自分で決めるんだよ!」
とりつく島もありません。
奥さんはそう言われて、診察室を出るなり、わたしの目の前を素通りして事務所へ一直線。
「病院の責任者はどなたですか?」
そう言うなり、いまの医者の暴言を伝えました。事務局長なる人物が出てきて、その医者の対応にものすごく驚いた表情を浮かべたのです。そして、奥さんに深々と頭を下げて謝罪し、
「風さんの今の担当医は、すぐに変えます。彼はここの専門医じゃないんです。今の間だけ臨時で来ていただいていて、普段あまり交通事故患者さんを診ていないので、あのようなことを言ったのだと思います。申し訳ありません」
すぐに担当医は変わりましたが、担当する医師によって、こうも対応がコロコロ変わるっていうのは、正直、とても不安でした。
この病院、大丈夫なのか…?
もらい交通事故、わたしの膝に激痛
事故からちょうど一週間後。
夜中、寝ていると膝に激痛が走り、寝返りさえ打てない状態に。あぶら汗が全身から吹き出し、一晩中、もんどり打つことになりました。
翌朝、予約も入れず、なんとか、病院にたどり着きましたが、わたしの担当医は、
「緊張が、ようやくとれたことによる痛みでしょう。それに、事故から一週間経っていますからね〜。今さらレントゲン撮っても保険でおりませんよ。事故との因果関係は証明されないし。もう少し、様子をみたらいかがですか?2、3日で痛みは取れるでしょう」
まったくの他人事なのです。人の話をきちんと聞こうという意思すら感じない。
まるで、わたしが言いがかりをつけて、慰謝料をふんだくるために嘘をついているとでも思っているような対応なのです。
「でも、この痛みは、尋常ではありません。調べていただけませんか?」
そう言っても、
「だって、事故直後は痛くないって言ってたじゃないですか。わたし、風さんに『他に痛いところありませんか?』って何度も聞きましたよね。それ覚えていますよね」
「あのときは確かに痛くありませんでした」
「ですよね。この一週間、運動はしていないんですよね。じっとしてたんですよね。だったら、ただの筋肉痛でしょう。事故の後は、筋肉が変に硬直していて、それがほぐれてくるといろんなところが痛くなりますからね。もうちょっと、様子を見てからでいいんじゃないですか。そんなに大げさに考えないで」
結局、わたしの足の痛みが取れず、MRIを取ることになったのは、それから一ヶ月後のことでした。
診断結果は、
左ひざ半月板損傷。膝の骨と骨の間のクッションの役割を果たす半月板が、半分剥がれ、ピラピラ浮いたような状態になっていました。そこが、神経に当たり、ものすごい激痛を引き起こしていたのです。
写真を診た医者は、ひとこと、
「これ、手術しないと治りませんよ。でも、事故とは関係ありませんから、風さんの健康保険でやりましょう。どうします?手術したら入院も必要になるので、すぐにはできませんよね。手術?やります?」
「ちょっと待ってください。事故とは関係ないって。言い切れませんよね」
「だって、時間が経ってますから。痛みも遅れて出てきてるし。事故との因果関係はわかりませんよ。だって、もう一ヶ月以上経っていますからね〜。だから、診断書には事故原因とは書けないですよ」
能面を保って、あくまで事務的に、『わたしはただの報告者。わたしに責任はない』という顔をして。
「だから、あのときすぐに検査してくれって言いましたよね」
「でも、事故直後に痛みを訴えてないでしょう?ここにカルテありますけどね〜。ほら、(わたしに見せながら)『首、腰の鈍痛、重い』。ね、足のことは一言も言ってない。初めて痛いっておっしゃったのが〜、ほら、ここ。ちょうど一週間後。これはね〜、事故が原因と言い切るには無理がありますよ。そもそも半月板を事故で損傷したら、その場でのたうち回りますよ。だから、わたしが申し上げているのは、可能性で申し上げるんですが、今回の事故が原因である可能性は極めて低い。そう申し上げているんです」
「でも、わたしには他に原因が考えられないんです。可能性は絶対にないんですか?可能性はゼロなんですか?」
「ハハハッ(失笑)ゼロではないけれど〜、事故が原因とは言えないということです」
交通事故後の対応は、医者で全てが決まる
そもそも、この病院は、救急車で運ばれた病院で、わたしたちの自宅から歩いてすぐ近くにありました。
救急隊員の方が、気を利かしてくださって、今後、通いやすいようにと選んでくださったのですが、その恩が仇になってしまったのです。
わたしたちも、
(この病院の対応は変だ…)
と、思いながらも、近いということや、また、新しい病院へ転院することの面倒臭さなどを考えて、ズルズルと通い続けたことが、後々、大きな後悔を生むことになりました。
実はこの、
交通事故対応の医者と患者のトラブルというのは、非常に多いのです。
わたしと奥さんのパターンも決してレアなケースでもなんでもなくて、大抵の場合がそうだと言ってもいいほどだそうです。
なぜ、そうなるのか?
それは、病院は、交通事故患者を受け入れたがるけれど、医者は担当したがらないという、現実があるからです。
交通事故治療は自賠責保険扱いのため、健康保険に比べて治療費を稼ぐことができるので、病院は大歓迎です。
その一方で、交通事故は、のちのち、裁判に発展する可能性がありますから、医師は、自分の診断結果が、裁判の判断材料になることを嫌うのです。要は、面倒に巻き込まれたくないのです。
それだけではなく、病院の方針に沿った治療をしなければならないというケースもあります。
診察料を稼ぐために、治療を長引かせたりするケースです。
もちろん、そんなこと関係なく公平な診断をしてくださる医師がほとんどだとは思いますが、
そういう現実もまた、あるのです。
一方の患者の側にも、慰謝料、保険料稼ぎのためにここが痛い、あそこが痛い、と言って、病院に通い続けたあげく、裁判を起こして慰謝料を荒稼ぎするなんて輩もいます。
そういう患者があまりに多いため、きちんと診察しようという意思のない医師もいるということです。
わたしと奥さんの担当医師もこのタイプでした。
では、そういうときは、どうすればよいのでしょう?
すぐに転院すればよいのです。
たったそれだけの、ことです。たったそれだけのことで、きちんと正しい診察を受け、正しい治療を受け、正しい補償をしてもらうことはできたのです。
でも、知識がないと、思いつかないのです。
わたしは、弁護士さんに相談することに決めました。
と、いっても、どうやって探したらよいのやら、どういう書類を持っていったらよいのやら、さっぱりわかりません。
そこで、わたしは、知人に、
「最近、交通事故に遭った人知らない?」
と、聞いてまわりました。
すると、半年前に知人のカメラマン夫妻がわたしと同じような状況で追突事故に見舞われたことを知りました。
早速、彼に連絡を取ると、彼は、いま、裁判で係争中だと言います。
「弁護士さんを紹介してほしい」
そうたずねると、彼は、
「風さん、弁護士さんに限定する必要はありません。交通事故の専門家にお願いするんです」
そう教えてくれたのでした。
つづく
(執筆者:心の冷えとりコーチ 風宏)
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